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American Picture Book Review
更新日:2018年5月29日 / 新聞掲載日:2018年5月25日(第3240号)

『美しい、黒い鳥』

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近年、「文化の盗用」という言葉が盛んに使われている。他の人種や民族の文化を模倣することを指すが、特にマジョリティがマイノリティの社会的不利さを改善しないまま、外観など表層部分のみを取り入れることに対する批判だ。

アメリカにはあらゆる人種と民族が混在することから、どのマイノリティも対象となり得、白人モデルが芸者ルックやネイティブ・アメリカンの羽飾りを纏って批判されたこともある。だが、昔からもっとも頻繁に行われてきたのは黒人を真似て顔を黒く塗る「黒塗り」だ。黒塗りは文化の盗用を超えた人種差別行為として絶対的なタブーだが、アメリカでも若い世代はそれを知らずにやってしまうことがある。数年前のハロウィーンに、ある白人女優が自分のお気に入りのドラマの黒人キャラクターの仮装で現れ、謝罪を余儀なくされている。日本でも昨年、ダウンタウンの浜田雅功が黒人俳優エディ・マーフィを真似て黒塗りし、賛否両論となった。2015年にラッツ&スターとももいろクローバーZが黒人ミュージシャンを模して顔を黒く塗った際には米国の事情を知る人たちが差し止め運動を起こし、成功している。

模倣する側は「黒人の文化に憧れ、敬意を表す」行為だと主張する。日本では単なるモノマネの場合もある。いずれにせよ、黒人自身は「黒塗りは人種差別である」として一切認めない。

文化盗用についてのこのすれ違いを、批判ではなく、いわば『北風と太陽』の太陽式に理解させてくれるのが本作『美しい、黒い鳥』だ。

昔、アフリカには赤、青、緑、黄、ピンク、オレンジ、紫……と、あらゆる色の鳥がいた。どの鳥も「黒い鳥がいちばん美しい」と思い、黒い鳥になりたいと願った。芸術の才能に長けた黒い鳥は願いを聞き入れ、鳥たちの身体の一部に黒い輪、縞、水玉模様などを描き入れる約束をする。その際、黒い鳥はこう言った。

「外面の色は内面を表すものじゃない。君は私のように振る舞わないし、私のように食べないし、私のようにグルーヴしないし、私のように脚を動かすこともない」「(君の一部が黒くなっても)私は私だし、君は君だ」

どの鳥も黒い鳥の言葉を理解し、黒い文様を描き入れてもらった後はこう歌った。

「私たちの色は、ほんの少しの黒でまったく新しいものになった。オー、美しき黒/黒は美しい」

黒い鳥は他の鳥たちの全身を黒く塗ることの無意味さを知っており、しかし豊かで魅力的な「黒の文化」を広めることには無上の喜びを感じている。作者はシンプルかつヴィヴィッドな切り絵の鳥たちを使い、こじれてしまった文化の盗用問題にいともあっさりと回答を示しているのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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