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八重山暮らし
更新日:2018年5月29日 / 新聞掲載日:2018年5月25日(第3240号)

八重山暮らし(42)

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パパイアには雌株、雄株がある。若い果肉は白く、熟すと橙色になり砂糖水のように甘い。 (撮影=大森一也)

庭のパパイア


パパイアをもらった。

若夏の季節、百日を過ぎた娘を抱き散歩に出掛ける。珊瑚の石垣に囲まれた庭先で、しばし語らう。緑の実は娘の頭よりも、ひとまわりほど大きく重みもある。
「パパイアを食べると、おっぱいがよくでるから。たくさん、あがるといいさぁ」

馴染みの言葉に思わず微笑む。もぎたてのパパイアの切り口から、白い液がとろりと流れている。まるで母乳のよう…。
「ありがとう」が、こぼれ出る。

南国の果実としての印象しかなかったパパイアが、島では野菜として欠かせぬ食材であることを知る。黄色く熟す前のまだ若い実を使う。大ぶりに切ったパパイアと豚の分厚いバラ肉を煮込む。パパイアの滋味がしみわたり、肉がとろとろになる。あるいは細切りにしたパパイアを炒めて鰹出汁を加える。さらに汁を吸わせ炒りつけるパパイアの炒めものは簡素な家庭料理だ。さっぱりとしておいしい。汁気を多く含み、母乳にとって大いに望ましい食事。素材が無農薬というのも嬉しい。

細く長く生長した幹のてっぺんを見上げる。四方に伸びる葉のつけねにしがみつき、ぶら下がるパパイア。たわわの実りは豊満な乳房を思わせる。これは電力を必要とせぬ天然の貯蔵庫。何とも、こころづよい。

庭にパパイアのあるたのもしさ。島暮らしのあらまほしき風景に幼い娘と感じ入る。

(やすもと・ちか=文筆業)
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