対談=小杉亮子×福岡安則  東大闘争が問うたもの 己の生き方を今問うために  『東大闘争の語り 社会運動の予示と戦略』(新曜社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年5月25日 / 新聞掲載日:2018年5月25日(第3240号)

対談=小杉亮子×福岡安則
東大闘争が問うたもの 己の生き方を今問うために
『東大闘争の語り 社会運動の予示と戦略』(新曜社)刊行を機に

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第6回
過去を知り、社会運動が生き生き展開する社会へル

小杉 
 大学当局からの闘争収束のための提案を、全共闘が蹴ったことについては、評価がいろいろですね。その判断は失敗だったと、政治性の欠如を見るのは小熊説。提案を受けた上で、改革を続ければよかったという意見もありました。
福岡 
 それが問題の解決になるとは、当時のぼくらにはどうしても思えなかった。謝罪と反省がないところで手打ちしたなら、改革を続けても意味がないと。それで結局、ああいう形で負けていったのだから、悲惨ではありますけれどね。でも交渉を呑んだら、後悔し続けたでしょう。

反省と謝罪抜きに、民青の人たちは手打ちにしようとして、大学当局と「十項目確認書」を交わしたけれど、結局、交渉の場には機動隊が配備された。生きた交渉にはならなかった。
小杉 
 謝罪や態度の変更なしにその後の社会変革はない、ということを学生運動で提示したのは、それまでの左翼学生運動にない問題の立て方でしたよね。目の前の問題に対して行うことは、ひいては社会の変革にもつながることなのだと。己を問うことは己だけの問題ではない。東大変革は東大だけの問題ではない。ノンセクトの人たちは、そういう思想で「ここ」を大事にしていったと。
福岡 
 六八年以前は、学生による運動ではあっても、学生であること自体は問うことをしない運動だった。革命運動の一翼を担うのみで、自分たちがいる場そのものを問うというのではなかったから、そこは劇的に違ったと思います。

ぼくらは素人で闘い方を知らないから、ときには日大全共闘が来て、おまえらバリケードの作り方も知らんのか、と教えてくれたり、東大生はひ弱だって笑われて(笑)。そういう関係は楽しかったですね。

日大生は日大生として、自分たちのことを捉え返していく。小熊さんが言う「自分探し」みたいに、闇雲に自分をどこかへ探しに行くのではなしに、自分が今いる足元を見つめるというのが、当時の学生運動でした。ある人たちはそれを、「自己否定」という言葉で表現しましたが。

予示的政治とはユートピア像を目指すのではなく、直接民主主義を自分たちで行いながら、己を問い、足元を固めて、もう少し遠くまでいけないかと、そういう試みだったと思っています。
小杉 
 望ましい社会を遠くに措定して、そのために現在を手段として使うのは、自分を見失うことに通じる。集う人数が多いと意思決定の方法もヒエラルキカルになりがちで、それぞれの意見に耳を傾けながら、お互いを尊重し合うかたちで合意していくには、小規模がふさわしい。予示的な学生運動には、オルタナティブな集団と合意形成の構想が、現実のものとして現れつつあった。

東大闘争を通して問われたことは、細部が非常に重要で、共有するには時間がかかる問題です。

なぜ今、社会運動が危険なものとして敬遠されるようになったのか。今の若者の目に、政治活動が怖いもの、脅威として映っているのか。簡単ではないですが、本当の東大闘争を知ろうとするところから、社会運動嫌悪がなくなり、多様な社会運動が生き生きと構想される社会になるといいと思います。
福岡 
 “1968”の諸現象を「一九六〇年代における国境を越えた相互連関・相互影響のありようから描く」という「グローバル・シックスティーズ」論は、これから深めていく、その過渡なのでしょうね。
小杉 
 そうですね。六五年の日韓基本条約調印が、東大闘争に具体的に影響を与えた重要な出来事だったということ、それが第二次世界大戦における日本の戦争責任や、アジアの旧植民地に対するトランスナショナルな想像力を、日本の学生運動に持たせるきっかけだったという視点は、今後研究を深めていきたいと思っています。
福岡 
 “1968”をこれからの研究者が語るときに、本書を抜きには成り立たない、そんな本になったことは確かです。(おわり)
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この記事の中でご紹介した本
東大闘争の語り ──社会運動の予示と戦略/新曜社
東大闘争の語り ──社会運動の予示と戦略
著 者:小杉 亮子
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
1968〈上〉 ――若者たちの叛乱とその背景/新曜社
1968〈上〉 ――若者たちの叛乱とその背景
著 者:小熊 英二
出版社:新曜社
以下のオンライン書店でご購入できます
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