【横尾 忠則】絵はスリル、絵は雑談 魔の力を借りて描く|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2018年5月29日

絵はスリル、絵は雑談 魔の力を借りて描く

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2018.5.14
 油絵だからといって乾燥するのを待つことはない。ピカソは一日一点、またはそれ以上のスピードで描く。早描きは自然に刹那的でオートマチズムになり、思考の介在する余地はないので直観の連続だ。観念は後退し、肉体が主導権を握るので自然に狂気と破壊が加わって、「こんなんが描けちゃいました」となる。

夕方まで宝田明さんの自伝を読む。その昔「新平四郎危機一発」で宝田さんと共演。アクション・テレビドラマで宝田さんは大ケガで降板。ぼくも決闘シーンで首の捻挫で降板。秋川渓谷だかの高い吊橋の中央でのアクションは今思っても恐ろしい。若かったんだよね。

僕は昔からハエ捕りの特技がある。部屋の床にハエが倒れているので外へ出してやる。次々ハエが出て来て、結局11匹外へ放す。ゴキブリと蚊以外は殺生しない主義。動物の肉は別。

2018.5.15
 終日アトリエで制作。最終的な構想がないのでいつも戦々恐々。絵はスリル以外の何ものでもない。

2018.5.16
 神戸から平林さんが運送屋のトラックに乗って「自画像」の絵を取りに。巨大自画像は魔除力があるので、無くなるのは寂しいが、次なる魔除画に挑戦。そーなんだ、絵というのは本来魔除け的な霊力がなきゃいけないはずだ。絵っていうのは魔の力を借りて描くものだから。

夜は長男英の誕生会を家族4人で彼の希望でポワレのステーキで祝う。彼の誕生日は昨日の5月15日。この日に生まれた人が僕の友人、知人に例えば瀬戸内寂聴さん、井上光晴さん、美輪明宏さん、伊丹十三さん、美川憲一さん、大竹省二さんらだ。

西城秀樹さんと。娘の抱いている犬(ロディ)はヒデキのプレゼント
2018.5.17
 〈ロスアンジェルスの病院になぜか入院している。担当医がMrパワーという。「もしやタイロン・パワーの息子さん?」と聞くとやっぱりそーだった。「以前、あなたのお姉さんか妹さんで、女優だった方がいらっしゃるでしょ? ノーマン・シーフと結婚した方で、ぼくを夕食に招待して下さったんです。その時彼女に赤ちゃんがいました」と言うと「ハイ姪です」と、それからあなたのお父さんにファンレターを出したらサイン入りのブロマイドを送って下さったんです。他にもエリザベス・テイラー、彼女はわざわざ手紙を書いてくれて、彼女の所に来た世界中のファンレターから切手をはがして、沢山送ってもらいましたよ。それからクラーク・ゲーブルとエスター・ウィリアムズさんからもブロマイドいただきました。「僕はそのエスター・ウィリアムズって人は知りませんね」。そーでしょうね。昔の人で彼女は水泳の選手だったんですよ。とドクター・パワーさんと話す〉。夢の内容は全て事実だ。おかしな夢である。最近の夢は虚実が一体化していたりして、夢としての自立性に欠如していて、ちっとも面白くない。

西城秀樹死去。長女美美がヒデキのファンで、ヒデキからシェットランド・シープドッグ〈ロディ〉をプレゼントされたり、ぼくは久世光彦演出のTBSドラマ「寺内貫太郎一家」にレギュラー出演していたので、ヒデキとは顔を合わすことが多かった。ヒデキのコンサートには娘に連れられて後楽園球場に毎年観に行かされていた。ご冥福を祈る。

2018.5.18
 「文藝」の〈アトリエ会議〉は保坂和志さん、磯﨑憲一郎さんと雑な談話を5時間半。こういうどーでもいい話が2人の小説に役立っている? のかな? そーいうとぼくの絵も雑談だ。

2018.5.19
 昨日、保坂さんがアトリエの樹がすっきりして見通しがよくなりましたねと言う。〈そうかな? と思って見ると本当に葉がなく枝だけだ〉。でも今朝見るとそーでもない。すると保坂さんも夢もウソをついていることになる。

2018.5.20
 昨夜も夢を見るが、現実そのままで何もわざわざ夢にすることもない夢だ。昔はUFOに乗って地球外惑星に行ったり、ヒューマノイド型西洋人そっくりの宇宙人とチベットの光る苔を採集に行ったり、南極の氷の上に立って氷を食べて宇宙人がぼくの歯を見て不思議な顔をした夢とか。それに比べて最近の夢は全く夢のない夢ばかりだ。

今朝は身震いするほど寒い。

妻から何か声を掛けられてもほとんど意味不明。何度聞いてもわからん。今までは耳学問できていたが、さてこれからは? 人の言うことも聞かない(聞こえない)んだから、益々マイペースで行くしかない。

夕方、ピカビアへ。頭をいじられる時間は長いが、ストレスどころかリラックスタイムで、時々眠っているらしい。美容院と整体院は精神のストレッチだ。

次々ぼくより若い人が亡くなる。病気の原因はそれぞれ違うけれど、やっぱりストレスが病気の発生の原因なんだろうなあ。ストレスを発生させないためには、あれこれ憶測しないことが一番。
2018年5月25日 新聞掲載(第3240号)
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