超・美術館革命 ―金沢21世紀美術館の挑戦 書評|蓑 豊(角川書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年5月26日 / 新聞掲載日:2018年5月25日(第3240号)

蓑 豊著 『超・美術館革命 金沢21世紀美術館の挑戦』
横浜国立大学 吉村 奈峰

超・美術館革命 ―金沢21世紀美術館の挑戦
著 者:蓑 豊
出版社:角川書店
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「美術館」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるだろうか?

厳か?難しそう?敷居が高そう?まさにそう思った人にこそ読んでもらいたいのがこの1冊だ。

実は私がこの本に出会ったのは書店ではない。昨年の夏、家族で兵庫県立美術館を訪れたときに、ミュージアムショップで見つけた。著者はこの美術館の館長だという。本の中身をパラパラとめくったとき、「これは!」と思った。

著者の蓑豊さんは、大学で美学・美術史を学んだ後、1度古美術商として修業してから海外に渡り、カナダ・アメリカで学芸員として働いたり大学院で博士号を取得したりといった経験を経て、日本に帰国し、いくつもの美術館の館長をなさっている方だ。

そんな著者が本書で取り上げているのは、石川県にある「金沢21世紀美術館」である。聞いたことのある人はもちろん、訪れたことのある人も少なくないのではないだろうか。

著者は本書の中で、自身が初代館長を務め、現在は特任館長として携わる「金沢21世紀美術館」の例を中心に、アメリカ仕込みの美術館経営の具体的なノウハウに加えて、日本人の美術館に対する認識について、アメリカを始めとする欧米諸国の人々のそれと比較しながら述べている。

本書の最後に、「教育」というキーワードが述べられる。

私はこれまで、日本の美術館・博物館は「教育」というものを意識しすぎて、難しそうで敷居が高くなっているのだと思っていた。しかしながら著者によれば、日本の美術館が「教育」というものを意識しすぎているから難しそうで敷居が高くなっているのではなく、日本の美術館が「教育」というものの本質をはき違えているから難しそうで敷居が高くなっているのだそうだ。《本来の教育は「引き出す」ことを主眼とすべきなのに、どうも日本の教育は、「教える」ことに終始しすぎるきらいがある》(143頁)。なるほど確かに、これは美術館だけに当てはまる問題ではなさそうだ。考える前にいきなり答えを「教える」ように「この作品はこういう理由でこんなにすごいんだぞ」と美術館側から押し付けるのではなく、それを見た人が自分で感じて考えて、その作品が本当に素晴らしいと思うか、好きかどうかを判断すればいい、という著者の考えに触れて、改めて美術館を訪れる人それぞれが作品に対して自由に感じたり考えたりしてもらうことが、美術館に親しみを持ってもらうために大切なことだと思った。

私がこの本を手に取ったとき、「これは!」と思ったのは、自分の中に「私は歴史や美術が好きで美術館や博物館をよく訪れるけれども、同年代でそういう人が少ないことが寂しいなあ」という思いがあったから。本書には、歴史や美術に詳しくない人でも、美術館や博物館を楽しむことのできるヒントが散りばめられている。きっと、本書を読めば、「金沢21世紀美術館」を訪れてみたくなること請け合いだ。加えて、誰もが訪れたくなるような美術館や博物館を望む者の1人として、文化事業に携わる方々にも1度読んで頂きたいと思う。
この記事の中でご紹介した本
超・美術館革命 ―金沢21世紀美術館の挑戦/角川書店
超・美術館革命 ―金沢21世紀美術館の挑戦
著 者:蓑 豊
出版社:角川書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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