講談社まんが学術文庫 石井編集長が語る『幸福について』『資本論』|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月5日

講談社まんが学術文庫
石井編集長が語る『幸福について』『資本論』

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ショーペンハウアー原作『幸福について』 今、人気の哲学書を漫画化するわけ

第一回配本の筆頭に持ってきたショーペンハウアーの『幸福について』は、2012年にテレビ番組「ワールドビジネスサテライト」内の「スミスの本棚」という書籍紹介コーナーで作家の本谷有希子さんが紹介したことがきっかで近年ブレイクした哲学書なんですよ。(http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2012/02/post125342.html)。放送後には書店から一気に900部も注文が入った、というエピソードがあります。現在も継続して売れ続けて、20万部以上重版されたという話を伺いました。通常、この手の哲学書でここまでヒットするのは異例なことです。ヒットの理由はどこにあるのか。それはずばり「幸福について」と直球のタイトルにあるのではないでしょうか。このタイトルは我々が想定している読者が求める「幸福に生きたい」と思う心理にピッタリと一致します。だからこそ、本谷さんの紹介も相まって元本の『幸福について―人生論』がここまで支持されるようになった、と推察します。さらに、別のショーペンハウアー本も売れていると聞きましたので、データ的な確証も得た上でこの作品を選びました。
この作品の漫画を担当したのはTeamバンミカスです。Teamバンミカスは漫画専門の制作チームで、このシリーズの第一回配本分では本書とゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』、唯円『歎異抄』を担当してもらいましたが、3冊それぞれ別の人間が作画しています。
Teamバンミカス担当の第一回配本作品の中では、この『幸福について』の作画は特に迫力があり、社内でも評判になりました。だから本シリーズの筆頭に挙げました。
漫画としての作画の魅力と話の面白さ、読者の心にダイレクトに刺さるテーマ設定、そして販売データの裏付けがうまく融合した内容になったのではないでしょうか。正直、本書は“超自信作”だと言えますね。

マルクス原作『資本論』 原典の理解のために

僕が小~高校生くらいの頃って学生運動の最盛期で、僕らは影響を受けた一番下の世代にあたります。当時、闘争を繰り広げている人たちがまるで悪に立ち向かうヒーローのように見えたものですよ。だから僕の同世代を始めとする多くの学生たちは『共産党宣言』や『毛沢東語録』、そして『資本論』を買って読んだものです。『共産党宣言』や『毛沢東語録』は内容自体難しくないので読んで理解はできましたが、『資本論』だけはどうしても歯が立たなかった。当時は高校生だからわからないのか、と納得したものですが(笑)。その後、就職して会社に入り、学生運動の最前線で活躍した人を先輩や上司と据えて仕事をするようになりました。そこで僕は当時の先輩や上司に「『資本論』の内容は理解しましたか?」って聞いてみたんですね。すると「実は理解していなかった」という答えが多かった。つまり、当時あれだけみんなが熱狂してお守りのように抱えていた思想を大多数の人は僕と同じようにあまりわかっていなかった、ということが浮き彫りになりました。
90年代に入り、共産主義国が軒並み崩壊し、一時『資本論』の影響は影を潜めました。2000年代に入ると今度は構造改革や新自由主義といった個人主義的な潮流が生まれ、格差社会、ワーキングプアなどの社会問題が時代を象徴するキーワードになりましたよね。その中で『蟹工船』ブームも誕生しました。その過程で再度『資本論』が注目されるようになったわけです。
200年前にマルクスが説いた労働について投げかけた問題意識は現在まで続いているわけです。だからこそ今も多くの人が関心を寄せるのですけれど、大多数の人は原典の正確な理解には至ることができない。今だからこそ、わかりやすい漫画の形でマルクスの思想を世に問う必要を感じたんです。僕の体験と時代の要請、また作画を担当した岩下博美さんの『資本論』に対する思いが反映した結果、読み応えのある作品に仕上がったのではないでしょうか。
この記事の中でご紹介した本
幸福について (まんが学術文庫)/講談社
幸福について (まんが学術文庫)
著 者:ショーペンハウアー、伊佐義勇
編 集:Team バンミカス
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
資本論 (まんが学術文庫)/講談社
資本論 (まんが学術文庫)
著 者:マルクス
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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