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2018年6月1日

第31回 三島由紀夫賞 山本周五郎賞 決 定

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三島賞の古谷田氏と山本賞の小川氏
5月16日、東京都内で第31回三島由紀夫賞と山本周五郎賞の選考会が行われ、三島賞には古谷田奈月氏の「無限の玄」(「早稲田文学」二〇一七年九月増刊女性号)、山本賞には小川哲氏の『ゲームの王国 上・下』(早川書房)に賞が贈られることとなった。

最初に決まったのは山本賞だった。選考委員の石田衣良氏による経過報告では、「今回は久々の激論で、最終的に小川氏の作品と呉勝浩氏の『ライオン・ブルー』(KADOKAWA)が残った。「可能性の小川哲」「完成度の呉勝浩」で意見がまっぷたつに割れたが、3対2で小川さんの受賞となった。呉さんの作品も受賞しておかしくない出来で、完成度が高く、洋々たる可能性が開かれている素晴らしい才能だと思う。結果として「きらめく才能」の小川さんへの授賞となったが、前半の面白さに対して後半の脳波を使ったゲームというものが小道具としてうまく機能していないなどの反対意見もあり、自分としてももう少しアクションをちゃんと読ませてほしかった。しかし何よりも前半がカンボジアの『百年の孤独』と言ってもいいぐらいに筆がノリにノッた爆発的な面白さが選考委員を強く惹きつけた。デビュー二作目にして大変な力量があるので、ぜひともおかしな方に行かず小説をバリバリ書き続けて欲しい」と語った。
ゲームの王国 上(小川 哲)早川書房
ゲームの王国 上
小川 哲
早川書房
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受賞者の小川氏は、受賞するとは思っていなかったのでとても驚いているとしながら、小説を書くことについて「人文学を研究していたのだが、これは基本的に解がない問題について考える学問で、そこで僕は解を出すことが重要なのではなく、私たちが真に分からないのは何かを問い続けることが大事だと思っていたので、その問いをフィクションで突き詰めようと思ったとき、問い自体の姿をえぐり出すような力があるSFを書こうと思った。ただ、ジャンルというのは問いに近づくための手段でしかないので、単に面白い小説を書きたいという点では特にこだわりなく、自分が本当に面白いと思ったものを書き続けていけたらと思っている」と話した。

三島賞については、辻原登氏より選考経過が報告され「選考は非常に難航して、五人の選考委員がそれぞれに違う作品を推す、あるいは積極的には推せないという意見が闘わされ、難航すればするほど各選考委員の文学観や読みがより鮮明になっていくという経験をした」と話した上で、辻原氏自身は最初からこの作品だと決めていたと述べて、受賞した古谷田氏の作品について「細部がとにかく秀逸で、自在な文学空間の作り方だった。さまざまな魅力的な要素があり、こういう小説を書いてみたいと思ったことがこの作品を買った理由かもしれない。こういう小説は僕には書けないという羨ましさもあった」と高く評価した。

古谷田氏は、結果が出てとにかく今はほっとして嬉しく思っていると受賞の喜びを語り、「女性号」と銘打たれた「早稲田文学」増刊号に、あえて男性しか出てこない作品を書いたことについては「私は一人の書き手として女性であるということを乗り越えて作品を作っていかなければならないと思っている。とは言っても女性だけで作るということを批判的に捉えているのではなく、その上でそれよりも一人の作家として作品を書きたいという一つの意思表示だった」と説明し、執筆については「今は思うがままに書くというよりは、テーマが先行して書くことが多くなってきているが、やはり書いている最中は本当に楽しいし、生きているという気がしている。それは書いているときにしか感じられない感覚で、それは昔から変わらないしこれからもたぶんそうだろう」と話した。
この記事の中でご紹介した本
ゲームの王国 上/早川書房
ゲームの王国 上
著 者:小川 哲
出版社:早川書房
以下のオンライン書店でご購入できます
ゲームの王国 下/早川書房
ゲームの王国 下
著 者:小川 哲
出版社:早川書房
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年6月1日 新聞掲載(第3241号)
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