連 載 映画と自由 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く58|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年6月5日 / 新聞掲載日:2018年6月1日(第3241号)

連 載 映画と自由 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く58

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ドゥーシェ(中央)とその左奥にシャブロル
HK 
 偉大な映画作家は「自由」を取り扱う。その代表がルノワールである。そのような理解を踏まえた上で、ブレッソンの映画はどのようにお考えですか。
JD 
 ルノワールほどの映画作家ではない、ということになります。それでもブレッソンの映画は、大半の映画作家とは比較にならないほどに強烈な映画です。いつ見ても驚かされるような映画です。しかしながら、私は、ブレッソンに対する興味を以前のようには持っていません。年月を経るうちに、ブレッソンは、観念的には、自由を考えることができなかった作家だと理解しました。
HK 
 同様の理由で、マルグリット・デュラスも好きではないのでしょうか。
JD 
 好きだとは言えません。しかし、デュラスは、決して悪い映画作家ではありません。面白い試みをしています。それでも、ラングやルノワールに匹敵する映画作家ではありません。
HK 
 自由の観点からすると、ストローブはいかがですか。滅多に話すことはないですよね。
JD 
 ストローブについて話してこなかったのは、話す機会がなかっただけです。何度もシネクラブで取り上げているはずです。ジャン=マリー・ストローブは、面白い作家です。少しだけ・・・・インテリのようなところがありますが、興味深い映画を作ってきた作家です。
HK 
 シネマテークやカルチェラタンに通っている古くからのシネフィルの中には、ストローブの映画を毛嫌いしている人も少なくありません。
JD 
 そんなことを言っている人が、いまだにいるのですか。
HK 
 シネフィルだけでなくとも、例えば多くの人が、ゴダールでも『軽蔑』や『勝手にしやがれ』にしか興味を持たない状況だと思います。『イタリアにおける闘争』とかはともかくとして、80年代以降のゴダールもそれほど好意的に受け取られてはいません。
JD 
 そういう評価しかできない人々は愚かです。馬鹿な行いをしているとしか言いようがありません。
HK 
 確かにそうですが、結局のところ映画の文化を支えてきたのは、「彼ら」ではないですか。60年代・70年代に映画を見ていた世代が、そのまま歳を重ねていった。
JD 
 その通りですが、彼らが愚かなことに変わりはありません。くだらないことに夢中になっているのです。
HK 
 おそらく、歳をとったシネフィルにとっての映画とは、ノスタルジーなのではないですか。
JD 
 ノスタルジーではありません。彼らは、偉大な映画を受け入れることができていないのです。偉大な映画とは、見る人を動揺させてしまうものです。彼らは、偉大な映画に不安を覚えてしまうだけです。その代わりに、些細な映画を見ることを好むのです。そして、「あの作品は良かった」、もしくは「この作品は良くない」などと優劣をつけることで満足しているだけです。そして、自身の知っている表現方法の外部の世界を拒否するのです。作品の中に何もないのであれば、私たちができることは非常に限られてしまいます。
HK 
 シネフィルといえば、フランスに限らず、世界中で、映画館は少し変わった人を呼び寄せています。
JD 
 日本にもいるのですか。
HK 
 世界中で、おそらく映画の文化が栄えていた国では、どこにでも存在していると思います。僕の世代だとそのような人は見かけませんし、ドゥーシェさんの世代が映画館に通い詰めていた頃にも存在していなかったはずです。なので、ある特定の時代の特定の地域にだけ存在し得た特殊な事例なのかもしれません。
JD 
 そのようなシネフィルたちは、根本的なところで、いつも同じものを追いかけ回しているだけです。彼らにとって、非常に残念なことだと思います。そうしたシネフィリーのあり方は、不自由に過ぎないからです。彼らは映画に囚われてしまっています。いつも同じものを追いかけ回して、映画館から映画館へと彷徨い歩く。決まったモデルから出ることができない。同じことの繰り返しです。シネフィルにとって重要なのは、決まり切った世界の外に出るということです。映画の外の世界にも面白いものはたくさんあります。いつの時代にも新しく面白い作家が出てきます。本当に映画と向き合うためには、自由でいなければなりません。 <次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
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