現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕 書評|大井 眞二(世界思想社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月2日 / 新聞掲載日:2018年6月1日(第3241号)

現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕 書評
信頼度の高い著作
今日的な諸問題を理解し克服するための基礎的情報を網羅

現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕
著 者:大井 眞二、田村 紀雄、鈴木 雅雄
出版社:世界思想社
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本書は初版発行(二〇○四年)以来、「現代ジャーナリズム」に関心をもつ学生にとっての適切な教科書として親しまれ、私たち教員が安心して推薦できるテキストであった。だが、第二版編者代表・大井眞二が全体の構想を記した「まえがき」で指摘するこの一〇有余年のジャーナリズムにおける「メタ過程」と、社会全体の圧倒的なコンピュニケーション(コンピュータ依存の社会動態)の進行が人びとの情報行動と社会観(倫理観・歴史観・世界観)を変えてしまった。その結果、マスメディアとジャーナリズムへの期待度と依存度がいちじるしく低下した。

今度の第二版が新しい編者と新執筆者の参加を得て、そうした状況がもたらした諸問題を理解し克服するための基礎的情報を網羅、今日的な様相で登場したことをまず喜びたい。社会の実相をとらえ、市民に分かりやすく説明し、市民の立場からの改革提言を政治・経済統合権力に伝え、両者の仲介者(メディアの原意)として機能するというジャーナリズムの社会的役割が逆に大きくなっているからである。

本書はⅠ「ジャーナリズムの歴史・教育・制度」、Ⅱ「ジャーナリズムの生産過程」、Ⅲ「ニューステクスト」、Ⅳ「グローバル化のコンテクスト」の全四部にそれぞれ四本、計一六本の論考から構成され、とりわけ大井が執筆した第二章「メディア化時代のジャーナリズム」には社会制度としてのメディアとジャーナリズムについての包括的な説明と対応する研究の紹介があり読ませる。加えて、編者の三人はいずれも日本マス・コミュニケーション学会の重鎮、各論の執筆者も国内外で活躍している気鋭の学者ばかりで、現代ジャーナリズムの概論として信頼度の高い著作となった。

たとえば、第二章「ジャーナリズム史」では戦前の「新聞各社が国策支持をして大衆を煽り、政府を後押しすることで発行部数を拡大」したと記述され、「今もジャーナリズムと営利性」の問題が続いているとの指摘がある。ならばどうするかについてまず問われるのはメディア関係者の応答責任(answerability)であり、個々のジャーナリストの自覚とともに、メディアとジャーナリズム研究者たちの倫理観とその表現および行動責任であることが示唆される。

『一九八四年』を書き、監視社会の到来を警告したジョージ・オーエルは「ジャーナリズムとは(社会的強者が)報じられたくないことを報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」との言葉を残している。今も昔も、理想的ジャーナリストとは「社会の実相をオーディエンスに知らせ、オーディエンスの理解と判断を助ける人」のことだし、その姿勢を基本に取材した情報の送受信活動によって社会を支えるのがジャーナリズムである。

評者が大学でジャーナリズム(当時は「新聞学」)を学び始めた五〇年前と現在の社会情報環境の違いは親しい人たちとの日常会話的情報交換の場が翻訳アプリの応用などでグローバルに展開できる「井戸端会議」となり、無機質な伝達手段を駆使する「顔のない」送受信者が多数を占めるようになったことである。その結果、信頼できる情報が減少、必要な情報はどういうメディア/媒体から得られるかの指針とその具体的案内が今ほど求められる時代はない。

その意味ではウェブ利用のジャーナリズムを検証した独立の章があったほうがよかったかもしれないが、本書には広く現代ジャーナリズムの実相を知り、頼れるメディアを求めるすべての人にそれらに散見される危うい側面への警鐘とともに、その対策への武器となる知恵が用意されている。とりわけ若い人たちが自分たちを取り巻くメディアの過去を振り返り、現在を解析し、これからのジャーナリズムについて考えるうえで役立つ本である。
この記事の中でご紹介した本
現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕/世界思想社
現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕
著 者:大井 眞二、田村 紀雄、鈴木 雅雄
出版社:世界思想社
「現代ジャーナリズムを学ぶ人のために〔第2版〕」は以下からご購入できます
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