戦後日韓関係史 書評|李 鍾元(有斐閣)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2018年6月2日

李鐘元・木宮正史・磯崎典世・浅羽祐樹著『戦後日韓関係史』
横浜国立大学 カン・ハンナ

戦後日韓関係史
著 者:李 鍾元、木宮 正史、磯崎 典世、浅羽 祐樹
出版社:有斐閣
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K-popの曲が日本で流れたり、日本の映画が韓国でヒット作品になったりする今の時代に日韓関係を考えると、なんだか難しい気がする。日韓関係の多面性を表す言葉として「日本と韓国は近くて遠い国」という表現がよく使われるが、その言葉に同感する時も多い。民間レベルでは仲良くしているのに、政治や外交レベルになると答えが見つからずとても遠く感じたりするのだ。

私は日本の大学院で日韓関係を勉強している韓国出身の留学生だが、日韓関係において改善の兆しが見えないとも言われる今、この複雑な日韓関係を解決できる方法は本当に無いのか疑問に思っていた。

そうしたなか出会った本が2017年に出版された『戦後日韓関係史』だ。日本で日韓関係および韓国政治外交を専門としている人なら知らない人がいないほど知名度の高い学者4人(李鍾元、木宮正史、磯崎典世、浅羽祐樹)が共同で書いた本であるため、政治や外交の動きが主な内容になっているが、一つの分析枠組みとして国家、市場、市民社会の相互関係まで着目しつつ、どちらかに偏らずできるだけ客観的に日韓関係を語っている。著者の思考より時代の流れを詳しく解説してくれる概説書に近い。そして戦後70年間の日韓関係を包括的に説明する本でもある。そのため、日本と韓国の両国関係について興味のある人であればぜひ入門書として読んでほしい。

この本を読んで一番印象的だったのは、2010年以降から今に至ってなぜ日韓関係が悪化しているのか、その理由を分析しているところであった。もちろんさまざまな理由が存在すると思うが、本書では「中国の台頭や米中関係などグローバルな構造自体が変動する中で、日韓両国はそれぞれ国家戦略を再定義したが、相互不信や齟齬が目立つようになった」と論じている。歴史意識問題や領土問題など何十年も抱えてきた2国間の課題が解決ができていないまま新たな世界情勢が訪れたということだろうか。韓国生まれ育ちの私からすると確かに韓国にとって日本は2000年代半ばまで圧倒的な存在感を持ったと言える。安保や経済協力に欠かせない相手国であったからだ。もちろん今も代わりはないけれど、中国の急成長とともに中国の力が大きくなり、日本と韓国の関係性が変わってきたかもしれない。新たな時代とともに新たな日韓関係を立て直す必要があるのだ。

そして本書では、日韓関係は、「グローバル化の進展とともに、日韓間の交流は多様化し、その相互意識も政府やメディアがコントロールできるものではなくなった」という。相互のイメージが多様化、個別化することは自然な現象であり、望ましいことでもあるが、必然的に不安定性を伴う。多様な意識が交錯する中で、安定的な関係を築くためには日韓のそれぞれの社会の総合的なバランスが問われる状況であるとも論じている。

この本を読んで正直な感想を言うと、日韓関係を改善するのには根深い難しさがあると思った。だけれど、この本を通じて日韓関係史を包括的に理解することができ、70年間という長い歴史の中から日韓関係の変動や特徴も知ることができた。もしかしたら本当の始まりはここからかもしれない。
この記事の中でご紹介した本
戦後日韓関係史/有斐閣
戦後日韓関係史
著 者:李 鍾元、木宮 正史、磯崎 典世、浅羽 祐樹
出版社:有斐閣
以下のオンライン書店でご購入できます
2018年6月1日 新聞掲載(第3241号)
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