立て看板規制に抗議する 大学の管理強化の流れに抗する  ――京大における学生など当事者より――|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月12日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

立て看板規制に抗議する
大学の管理強化の流れに抗する 
――京大における学生など当事者より――

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京都大学において現在、立て看板でメッセージを発信してきた学生など当事者の営みが危機にさらされている。2017年12月19日に京都大学当局が公表した「京都大学立看板規程」が5月1日より施行された。現状に危機感を抱く有志による「立て看板規制について考える集まり」準備会として、この問題についての現状の報告とわれわれの活動の紹介をさせていただく。

当該規程では、構内に立て看板を出せるのは原則として総長が承認した全学公認団体のみとされ、設置場所、設置期間及び看板の大きさや枚数が厳しく制限されている。具体的には、設置場所は大学当局が指定した場所のみとされ、設置期間は原則として1か月、大きさは縦横それぞれ2メートルで枚数は1団体につき1か所に1枚とされている。かつては各大学のキャンパスに存在した立て看板が大学当局の管理強化によって姿を消すなか、立て看板が残る数少ない大学の一つである京大にも規制強化の流れが及んできている。

規制の発端は京都市による京大に対する行政指導であると大学当局は説明している。「屋外広告物等に関する条例」が完全施行された2012年以降、京大の外構に置かれた立て看板は、景観の観点から規制される「屋外広告物」に該当し、また通行人に危険であり、道路上の不法占用にもあたるとして、京都市は行政指導しはじめた。昨年10月5日に「立て看板等の設置について」という通知を京都市が文書で京大当局に送付したのをうけて、翌月14日には、川添学生担当理事・副学長の名義で外構の立て看板設置者に対して京都市の条例の遵守を求める通知が当局より出された。そして、12月12日の部局長会議及び同月19日の役員会を経て「京都大学立看板規程」が制定されたのである。この間、市や学生など当事者との話し合いの場が開かれることはなく、説明会の開催も行われないまま、規程の制定は一方的に京都大学達示としてホームページ上で公表された。

京都大学当局が進めている立て看板規制の動きの問題点を見てみる。まず、制定された規程の内容それ自体、大学構内に出されてきた立て看板を一律に規制することで、学生など当事者がメッセージを発する機会を奪い、さまざまな活動を抑圧する問題をはらんでいる。また、規程制定までのプロセスについても、学内諸団体との対話を経ない、強引な決定であるとわれわれは考えている。過去の京大では、2005年に立て看板設置場所である百万遍の石垣を撤去する話が出たときも、西部構内のサークルボックス棟の建て替えの話が浮上した際にも、学生側との対話に当局は応じ、学生の意見を尊重する形で問題解決が図られた。しかし今回の立て看板規制は大学当局により一方的に強行されている。さらに、そもそも規程制定のきっかけとなった京都市の行政指導の対象は公道に面した立て看板である。構内の立て看板については条例上指導できないにも関わらず規程では構内の立て看板が規制されているのも非常に説明のつかないことであると言える。

また、今回の規程制定のプロセスは大学自治の観点からも瑕疵がある。規程制定のきっかけは、京都市の行政指導だが、学生ら当事者がメッセージを発する営みを「景観」や「安全」の名目で一律に規制するのは表現の自由を抑圧しかねず、それに無批判にしたがい立て看板規制に踏み切る大学当局の動きは大学としての主体性の放棄であるといえる。良い景観とは何かについては議論の余地がある問題であり、また通行人の安全確保のためには現場の実情が安全対策に反映されるべきであるにも係わらずである。準備会の考えでは、多くの人が多様なメッセージを立て看板を通して発信する営みもまた大事であり、良い景観をどう作り、どう通行人の安全を確保するかは現場の意見を踏まえた話し合いを経て決められるもので、京大当局が京都市の指導に現場の声を無視する形でしたがうことで解決される問題ではない。なお、京大内部で学生の課外活動関係の案件を直接扱うのは学生担当理事・副学長を長とする学生生活委員会の第二小委員会だが、第二小委員のメンバーですら現場の実情を知らない者がいることが準備会の接触を通して明らかになっている。

先述してきたように、今回の「京都大学立看板規程」及びその制定までのプロセスに重大な問題があると捉える有志で作られた「立看板規制について考える集まり」準備会は一方的な規程の制定・施行に反対し、学生団体との対話による規程のあり方・運用の見直しを京大当局に求めている。まず、今年2月8日に、準備会は学内諸団体との連名で「すべての当事者が自由に参加できる公開の場での話し合いないし説明会の開催」を求める要求書を川添副学長宛に提出したが、京大当局は「『京都大学立看板規程』は既に大学として決定されたものであり、話し合いの場は設定しない。」と拒否し、3月8日にも再度要求したにもかかわらず依然として対話に応じていない。この間、京大当局は同月30日付けの「Campus Life News No.24」で、外構の看板は強制撤去する、構内にあるもので規程違反の看板は自主撤去を求め、応じない場合には強制撤去する、としている。そして規程施行後には二度にわたり強制撤去が行われた。

準備会としては、一方的な規制に抗するために(1)立て看板を出す活動の継続、(2)学内及び学外で規制反対の声を高める、(3)今回の件をきっかけに表現の自由の内実を問い直していく、を今後の活動として考えている。(1)については、学内外の諸団体の連名での規制に反対する趣旨の立て看板を3月10日より出している。また5月1日の規程施行当日には西部構内に設置された連名立て看板周辺で情宣を兼ねた臨時のカフェを開いた。なお、準備会の立て看板にも通告書は貼られたが、準備会と撤去を求める職員との間での係争には至っていない。(2)については、4月より規程の見直しのための対話を求める署名を山極総長・川添副学長宛に出すべく紙媒体及び準備会公式サイト(※)ではじめた。また、4月30日には準備会共催で映画監督で京大OBの瀬々敬久氏及び美術家の伊藤存氏、司会に京大教授の駒込武を迎えての「〇〇からみた立て看規制vol.1 表現者と語り合う立て看板」と題した講演会が京大で開かれ、準備会から現状報告を行った。(3)については、今後どのような活動ができるかを検討している段階である。

われわれ準備会は、今回の京都大学当局による立て看板規制の強行は学生などの主体的な活動及び表現の自由を抑圧するものであり、単に京大の学内問題として片付けられない問題性があると認識している。準備会としては、立て看板を「特権的京大の文化」として守ろうというのではなく、全国的な大学の管理強化の流れに抗する視点から規制を問い直していくものである。また、景観・安全政策を口実にした公共空間への行政の恣意的な介入及び行政による私物化が進められている現状とも併せて考えていきたいところである。今後は京都大学当局に学生ら当事者との対話に応じ、規程の見直し・運用に向けた協議を行うことを求めると同時に学内外で反対の声を高めていく、規程の実質化を防ぐために立て看板を必要に応じて出し続けることを主な活動としていく。



※準備会の公式サイトのURLは、https://kyotoutatekan.wixsite.com/kyoto-u-tatekan
(「立て看規制を考える集まり」準備会)
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