対談 雨宮処凛×千田有紀  「女子」の呪いを解く 『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月8日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

対談 雨宮処凛×千田有紀
「女子」の呪いを解く
『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に

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第2回
■七〇年代のウーマンリブ九〇年代のフェミニスト

雨宮 処凛氏
雨宮 
 この本は私の初ジェンダーの本ですが、キャバ嬢のときも、物書きになってからもそういうものにフタをしてきて、たまにジェンダーやフェミニズムの本を読んでも、あまりにも現実との落差が酷くて辛くなってくるんです。セクハラは社会に溢れてるし、女なんだからこうしろという言説は溢れているし、本を読めば読むほど、自分のまわりの男性にも腹が立ってきて愚かに見えてしょうがなくなる。そのあたりはどう乗り越えていらっしゃるんですか? 
千田 
 私も出来ればフェミニストなんかになりたくなかったですよ(笑)。高校生のあたりから、自分の生き難さのヒントはフェミニズムにある。でも、これは触れるとヤバイ、バッシングを受けてさらに生きにくくなりそうだ、なんとかフェミニズムに近づかないで生きる道はないのかと探ってみたのですが、結局無理でした。フェミニズムを知れば、生きやすくなるんですけどね、実際には。

私はバブル世代ですから、ミスコンが本当に盛んな時代で、自治体が主催することも「われわれの血税が」などといわれない大らかな時代でした。フェミニズムとか性の商品化批判とかするひとは完全に変わり者扱いだったと思います。

「こんな浮かれたバブルの時代は長く続かないだろうし、私はもういいや」と思って、ウーマンリブの本などをずっと順番に読んでいくことにしました。さかのぼって「青鞜」とかまで。当時は男女雇用機会均等法が一九八五年に出来ていましたが、まだ専業主婦を前提とした近代家族規範が圧倒的に強い時代で、女たちが問題にしていることは、ずっと、それこそ何十年も前から変わらないんだなぁと驚きました。
雨宮 
 全然進歩がないということですね。
千田 
 全然変わっていなかった。九〇年代の女子大生が共感して涙しながら七〇年代の本を読んでいるって変ですよね。自分の生きづらさみたいなものはジェンダーの問題なんだと腹を括りました。逆に雨宮さんはなんでフェミに来たのか聞きたいと思いました。
雨宮 
 見ないふりで蓋をしてきたのがやっぱり無理だった。ずっと言えなかったのは自信がなかったからなんです。一番直接的な被害に遭ったのがキャバ嬢のときなのですが、何を言ってもお前はキャバ嬢じゃないか、それが仕事じゃないかとオッサンに言い返されるに決まってる。職場ではセクハラとかうるさいからキャバクラで発散すると堂々と言う客もいて、昼の世界の女性の人権が守られると夜の仕事をしている自分たちにその実害がくるんだみたいな感じで、逆に女性の人権を訴えるフェミニストたちをどこかうっすらと憎んでいたような部分もありました。
千田 
 私たちがその尻拭いをさせられているみたいな。
雨宮 
 はい。でも物書きになってからもセクハラがあって、それでゴスロリで武装していたのですが、結局自分の周囲でモノを言う女がいなかったというのが大きかったですね。そういう環境だったので、十二年くらい前に反貧困の運動を始めてから少しずつフェミ的なことを知るようになって、ここに自分を助けてくれるものがあるなと気付いた。運動をしていると黙らないということが身に付いていくのでそれで言えるようになってきたのかも知れません。
千田 
 キャバクラにセクハラ代が入っているというのはまさにその通りだなと思いますよ。セクハラ騒動で辞任した財務省の福田淳一・前事務次官が、「記者に言ったんじゃない。夜のお店に行くと恥ずかしながら言葉遊びをする」と言い訳をしましたよね。記者に仕事の場で言うのは駄目だけど、キャバ嬢相手ならこれくらい言ってもいい、というのもダメだろうとびっくりしました。
雨宮 
 夜の店なら何やってもいいだろうというひとは結構多い。
千田 
 でも女性はそんなことしなくたって生きてるんだから、男性はなんでそういうところでガス抜きしないと鬱憤が晴れないのか。なぜ息を吐いたり吸ったりするように女性を貶めないと駄目なひとがいるんだろう。実は考えるべき問いですよね。
雨宮 
 私の経験でも、もちろんキャバクラに下心があって来ているひとも多いけれど、圧倒的に多いのは金払っていじめてやれみたいな鬱憤晴らしでした。そもそもなぜ日本にはこんなに男性が甘やかされる癒しシステムが豊富なのか不思議です。
千田 
 男性に向けてだけですよね。むしろ、私だって癒されたいわよっていう女性だって多いのに(笑)。雨宮さんが言っていることはすごく良くわかる。

私がフェミニズムを学んでいって、とくに胸にすとんと来たのはミソジニー(女性蔑視・女性嫌悪)という言葉なんです。男の人は女の人が好きなんだ、だから欲情すると言われてきましたよね。でもそうは思えない。実はそれは軽蔑や憎悪に近いという説明にハッとして、過去の経験が位置づけられました。たぶん、男性は女性の「性的魅力」によって惑わされる、自分が理性的な主体の位置から転げ落ちるように感じられることに挫折感をもつのではないか。その憎悪を性欲をかきたてる女性に転化しているのではないかと思います。実はコントロールを失う男性も、性的対象にされている女性も、同時に無力感を味わっていることが多いんじゃないかと思うのですけれどね。
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この記事の中でご紹介した本
「女子」という呪い/集英社クリエイティブ
「女子」という呪い
著 者:雨宮 処凜
出版社:集英社クリエイティブ
「「女子」という呪い」は以下からご購入できます
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃/みすず書房
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃
著 者:ウェンディ・ブラウン
出版社:みすず書房
「いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃」は以下からご購入できます
Black Box/文藝春秋
Black Box
著 者:伊藤 詩織
出版社:文藝春秋
「Black Box」は以下からご購入できます
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