対談 雨宮処凛×千田有紀  「女子」の呪いを解く 『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月8日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

対談 雨宮処凛×千田有紀
「女子」の呪いを解く
『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に

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第3回
■AVとジェンダー サブカルとジェンダー

千田 有紀氏
千田 
 個人的には雨宮さんがなぜサブカル女子になったのか、興味があるんです。居場所とか欠落感とか自分が欲しいものがあるからサブカルに行く。でもそのサブカルの位置が私たち世代とも違っている。
雨宮 
 入り口は『完全自殺マニュアル』(鶴見済著/一九九三年、太田出版)でした。私が高校生くらいのときに出てミリオンセラーになりましたが、『完全自殺マニュアル』を読んで、自殺した漫画家の山田花子さん(一九六七―一九九二)を知り、彼女の漫画が『ガロ』で連載されていたので読むようになったらいろいろくっついてきて、サブカル地獄に強制的に入りますよね(笑)。当時、私がそういうものにハマりだした頃、「別冊宝島」や雑誌「BURST」、『世紀末倶楽部』(コアマガジン)とかが流行っていて、死体写真と右翼・左翼とかが同列の闇鍋状態にあるというのが当時のサブカルの景色だったので、そういう中で自分自身もいじめられて対人恐怖で貧乏で、メインストリームには行けない。キラキラ女子には絶対なれない。そういうところからどっぷりハマっていた。
千田 
 生きづらさがサブカルに水路づけられてる感じなんですね。
雨宮 
 千田さんはどこが入り口なんですか?
千田 
 私たち、私より少し上の世代は、あきらかに少女漫画ですね。藤本由香里さんが『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』(朝日新聞出版)という本を書いています。「私の居場所はどこにあるの?」というのは、もともと中島梓(栗本薫)さんの『コミュニケーション不全症候群』(ちくま文庫)という評論集の帯にあった言葉で、「居場所」の問題として定式化したのは慧眼だと思っているんですよ。一部、やおい女子からは評判が悪い説明なんですけれども。

漫画家の萩尾望都さんが自分が描いてきたのは、「少女のトラウマ」であると、はっきり仰っています。私たちの世代では、女の子は愛とか恋とかで救済されるようにできているんです。女性は女性であるということで、この社会に居場所がないわけですよね。とくに親から離れて生きられない、無力な少女は。で、ここからが両義的なんだけど、そういう少女は、いつか私も恋愛して理想的な家庭を作り、そのことによって居場所が出来る。傷ついた少年、それは少女自身の投影なんですけれども、そういう少年を救済する存在になることによって、自分自身も救済される。男性を救済することで、男性によって救済される幻想があったわけです。その極端な進化系が、BLだと思っていて、原稿執筆中です。

中島梓さんの『コミュニケーション不全症候群』『タナトスの子供たち 過剰適応の生態学』(ちくま文庫)などは、私にはすごく腑に落ちる。少女漫画経由のBLファンと、同人誌世代のやおいファンはたぶん別の生き物くらい違うと私は思っていて、たぶん少女漫画経由のひとは、頷くんじゃないかな。

彼女が問題にしていたのがダイエットとやおいとオタク、これが今の時代をあらわす三つの問題だからと論じています。そのうちダイエットは男性もするようになり、オタクにかんしては、みんなライトなオタクになる。最後に、やおいが残るんです。摂食障害などいろんな問題を抱えた子がやおいを自ら描き、また読んでいくことによって、「なぜだかわからないけれど」回復していくのだと。その分析がすごく面白かった。ジェネレーションによる救済オプションの違いというのはありますね。
雨宮 
 先程世代の不幸という話がありましたが、私の少し下から中学校の家庭科が男女共修になりました。私は共修ではなかったのですが、男子も一緒にやったりすることがあって、性教育は曖昧な表現でふわっとした感じでした。
千田 
 二〇〇〇年代から、七生養護学校事件(歌や人形を使った独自の性教育プログラムによる授業方法)など、徹底的な性教育バッシングがあって、性教育がタブーになった。でもじゃあどこで性を学ぶかっていうことなんですよ。日本のAVは「Bukkake」が英語になるくらい海外で消費されて、ものすごく過激なことをやっている。普通の性交をわざわざAVで見る必要がないとでもいうように。それでいて中学校では避妊を教えちゃいけませんとか、不思議ですよね。
雨宮 
 正しい知識をどこでも学んでいないですよね。海外のスウェーデンの性教育の話を聞くと、すごくまともでびっくりします。セックスは愛を確かめ合うコミュニケーションで美しい素敵なものなんだよということを小学校くらいから教えて、中学校、高校では避妊具の実際の付け方などを教えると聞くと、私たちは最初の前提から教えられていなくて日本はおかしいなと思います。
千田 
 いきなりAVで学習しちゃう。学生にジェンダーの何が問題だと思う?と聞くと、女性の賃金が低いとか教育がということではなくて、二〇〇〇年代以降のある世代から、AVだと思うと答えるんです。

AVを見るとすごく男尊女卑が刷り込まれて、女性は性的な対象にしていいんだと思うようになると。だからAVを変えることによって、ジェンダーの男女の関係が変わるんじゃないかと大学生が言うようになりました。
雨宮 
 男女問わず?
千田 
 特に男子が多いですね。自覚的な男子はAVが何を伝えているのかをわかっている。AVにかんして最近の変化は、ネットによって女子も消費しているという点でしょうか。昔は男子だけがAVを見ていて、女子はセックスを愛とかコミュニケーションと思っていて、そのギャップによって女性が傷つくということがあったと思うのですが、今では女子が直接AVからセックスを学んでいる。そのことが何をもたらすのかは、まだよくわかりません。
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この記事の中でご紹介した本
「女子」という呪い/集英社クリエイティブ
「女子」という呪い
著 者:雨宮 処凜
出版社:集英社クリエイティブ
「「女子」という呪い」は以下からご購入できます
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃/みすず書房
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃
著 者:ウェンディ・ブラウン
出版社:みすず書房
「いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃」は以下からご購入できます
Black Box/文藝春秋
Black Box
著 者:伊藤 詩織
出版社:文藝春秋
「Black Box」は以下からご購入できます
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