対談 雨宮処凛×千田有紀  「女子」の呪いを解く 『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月8日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

対談 雨宮処凛×千田有紀
「女子」の呪いを解く
『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に

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第4回
■インスタ映えの時代を生きること


千田 
 この本の中で、第三章「「呪い」と闘う女たち」に出てくる、サブカルライターの井島ちづるさんのお話が印象に残りました。
雨宮 
 井島ちづるさんは、九九年に亡くなったライターの女性ですが、AVで処女を喪失して、その後ライターとして数年間活動していました。が、彼女を思い出すと、九〇年代のバクシーシ山下とかの過激なAVで、ひどいことをすればするほどそれがカッコいい、といった空気を思い出します。当時二〇代だった私は過激なAVの中でひどい目に遭っている女性が決して他人事には思えなかったんですが、多くの文化人なんかもそういうAVを評価していて、誰一人として女性の人権なんて顧みていなかった気がする。そういう「なんでもアリ」の空気の中で彼女はイベントなんかでも「なんでもするAV女優」という扱いを受けていて、たぶんすごく傷ついていた。そういう中で、彼女は亡くなってしまうのですが、死因もわかりません。今、そんな九〇年代の悪趣味AVは完全に忘れられていて、今はAVと言えば出演強要被害や人権の問題として語られることが多い。やっとそういう問題が注目されたのはよかったけれど、「子宮破壊」を売りにして女優に重傷を負わせ、逮捕者が多く出たバッキー事件なんかもありましたよね。この辺りのことってまったく総括されずに「なかったこと」になってる気がして、すごくもやもやします。
千田 
 この本の中でも一貫して女子や自己責任といった現代的な問題について書かれているなと思ったんです。今の若い子たちの自己責任論は大変なところに来ている。『週刊読書人』の年末回顧でも取り上げたのですが、ウェンディ・ブラウンの『いかにして民主主義は失われていくのか 新自由主義の見えざる攻撃』(中井亜佐子訳、みすず書房)という本がとても興味深かった。すごく軽く言えば、新自由主義下の社会ではイケてるひとにならなければいけないということでした。
雨宮 
 あー、それキツい!
千田 
 新自由主義は、たんに経済合理性を追求しろという脅迫ではないんですよね。経済合理性を無視しても、競争的経済を追求すべしという命令なんです。例えば、経済合理性で考えれば、例えばいまや教育投資はよい大学や就職に直結しているかどうか不明だし、そもそもそれが幸せかもわからない。でもだからこそ、そこに投資してしまうわけじゃないですか。多分おそらく資金は確実に回収できないから、全然合理的じゃない。でも競争しなきゃいけないんです。借金してでもインスタ映えする商品や経験を購入して、他人に見せびらかすような消費をする。それは短期的には愚かしいんだけれども、でもやはり自分自身の「ポートフォリオ」をキラキラふわっとさせることに意味があると、みんな信じている。それができないひと、競争に乗れないひとは、敗者なんです。
雨宮 
 辛いですね。際限ないですしね。
千田 
 バブル世代も、暗い、ダサい、が批判の言葉で、「あっかる~い」ことがめざされた。自分が辛いということを、真面目に他人に伝えるのことは困難だった。でもサブカル世代も、雨宮さんによれば、女性の問題や性の商品化を問題化すると「裏切り」だといわれてしまう。自分自身何が辛いかを認識することすら出来なくて、よくわからないけどつねにキラキラしてなきゃいけないという、そういうオブセッションの時代に生きるってすごい辛いことですね。
雨宮 
 今お話を聞いていて、自分がジェンダーとかフェミニズムに意図的に距離を取ってきた理由がなんとなくわかりました。
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この記事の中でご紹介した本
「女子」という呪い/集英社クリエイティブ
「女子」という呪い
著 者:雨宮 処凜
出版社:集英社クリエイティブ
「「女子」という呪い」は以下からご購入できます
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃/みすず書房
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃
著 者:ウェンディ・ブラウン
出版社:みすず書房
「いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃」は以下からご購入できます
Black Box/文藝春秋
Black Box
著 者:伊藤 詩織
出版社:文藝春秋
「Black Box」は以下からご購入できます
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