対談 雨宮処凛×千田有紀  「女子」の呪いを解く 『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月8日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

対談 雨宮処凛×千田有紀
「女子」の呪いを解く
『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に

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第5回
■シングルマザーの問題は女性問題


千田 
 本書の中で一つだけ違和感があるとしたら、浮気のところかなぁ。海外だとみなさん気軽に離婚されていて、離婚の理由を聞くと、本当に驚きますよ。真顔で、ときめきが欲しくなったとか、彼女とは性的な関係ではなくなったからとか言うんですよ。ときめきのために、ふんわりと離婚する。アメリカの州によってはどちらかが嫌だと言ったら同意も無く即座に離婚。「No fault divorce(過失なき離婚)」というのですが、全然悪くなくても相手が嫌だと言ったら結婚を続けられない。普通の結婚前のカップルと同じです。
雨宮 
 それはいいですよね。いろいろ日本と前提が違う気がする。
千田 
 共同親権になっているのも、離婚のときに親権で揉めずに即座に離婚できる制度だからですね。お互いの過失を非難し合って泥沼をやらなくても、夫婦の恋愛関係の問題で即座に離婚できるようになっているなら、離婚後に協力して親でいることはできますね。でも、日本ではまだ専業主婦のひとがいて片稼ぎのシステムになっている。だから、日本でいきなり今日から離婚と言われると、専業主婦のひとたちは食い詰めちゃう。離婚も暴力などが原因のことがものすごく多いし、離婚に至るまでに女のひとは本当に我慢している。

これだけ少子化の国で、子どもを保育園に入れられなくて日本死ねとか言われるのはやはりおかしいですよね。欧米に数十年も遅れて、いまさらですが、共稼ぎのシステムに転換しないとやっていけない。経済的に自立しているというのは重要で、いざというときに離婚できると同時に、「どうせ離婚されたら生きていけないだろう」という状況下での非対称的な夫婦関係も避けることができる。夫が好きに浮気して暴力を振るなら、私は別れるといえるんです。だから、単純だけど女のひとが経済力を持つことはすごく大事なことです。
雨宮 
 シングルマザーになっても半数が貧困になる社会でなければ、結構いろいろな問題が解決しますよね。
千田 
 シングルマザーの問題は女性問題なんです。女性が非正規でしか働けない、女性の給料が低くてすごく大変になるという。シングルファーザーも少ないとはいえ、就労収入は四〇〇万近くあって、シングルマザーの倍です。(*厚生労働省:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果)
雨宮 
 非正規の女性だと年収は一四八万円です。子育てどころか自立も出来ない。ただ、女性が働くこと自立することは重要ですが、女も働けと言われてその上、家事も育児もして夫にも愛されて場合によっては介護もする。韓国でも同じ状況だと聞いたのですが、女性が活躍する社会になればなるほど、結局、増えるのは女性の負担だけという状況をなんとかしなければいけないですね。
■右翼からの#MeTooがはじまる?

千田 
 なんで女性が全部尻拭いをしなくてはいけないのか。私は雨宮さんに是非聞きたいのですが、以前は女性の政治家はどちらかというとパヨクと言われるような人権とかそういうものに敏感なひとが多かったけれど、今の女性政治家の出世コースは、日本会議に入るとかむしろ保守ですよね。女なのにアイツはよくやるとか、そういう感じになっているのは一体何なんでしょう。
雨宮 
 例えば稲田朋美さんは失脚しましたが、右翼っぽいことを言っているだけで特に実力があるわけじゃなくて、首相の安倍さんに気にいられてトントン拍子にあそこまでいったみたいな。政権の中であえて女だから防衛大臣にするとか、ある意味女を利用されているのかなとも思います。
千田 
 女を利用しているのでなく、利用されている。それは良い表現ですね。
Black Box(伊藤 詩織)文藝春秋
Black Box
伊藤 詩織
文藝春秋
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雨宮 
 一番怖いのは、『Black Boxブラックボックス』(文藝春秋)でレイプ被害を公表した伊藤詩織さんをディスっている右派の女性とか、それに賛同する女性の存在、そういったことが気になります。右翼の中にいれば絶対にセクハラはあるだろうし、男尊女卑だし、いつか爆発してそっちからの#MeTooが始まるんじゃないかなと思っているのですが。
千田 右翼の中からも。
雨宮 
 右翼の中でセクハラがあっても相談できないと思いますし、矛盾が凝縮している場だと思う。今すごく我慢しているのではないかと思います。
千田 
 自衛隊や警察などもあるでしょうね、でも言えない。マスコミ業界もいろいろあるし、学術の世界でも困ったひとをたくさん見てきて、あれは私も辛かった。#MeTooですね。
雨宮 
 警察については、伊藤詩織さんが被害に遭った時、その話を何回も何回もさせるなんてどうしようもないと思いました。警察に相談に行くことも躊躇しちゃいますよね。しかも警察こそ男社会ですし、どこに相談すればいいのか。
千田 
 女性自衛官もそうですが、そういう組織にこそ女性が入っていくことで民主化されていくのか、それともそういう組織に女性がいくら入っても駄目なものは駄目なのか。常に問われる問題です。
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この記事の中でご紹介した本
「女子」という呪い/集英社クリエイティブ
「女子」という呪い
著 者:雨宮 処凜
出版社:集英社クリエイティブ
「「女子」という呪い」は以下からご購入できます
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃/みすず書房
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃
著 者:ウェンディ・ブラウン
出版社:みすず書房
「いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃」は以下からご購入できます
Black Box/文藝春秋
Black Box
著 者:伊藤 詩織
出版社:文藝春秋
「Black Box」は以下からご購入できます
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