対談 雨宮処凛×千田有紀  「女子」の呪いを解く 『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 特集
更新日:2018年6月8日 / 新聞掲載日:2018年6月8日(第3242号)

対談 雨宮処凛×千田有紀
「女子」の呪いを解く
『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)刊行を機に

このエントリーをはてなブックマークに追加
第6回
■#私は黙らないフェミニズムの現在

雨宮 
 韓国でも二〇一六年のミソジニー殺人をきっかけにフェミニズム運動が盛り上がって、世界中で「#MeToo」が盛り上がっている中、日本は無風だと言われていましたが、今年に入ってやっと日本でも盛り上がってきた感があります。私がすごく感動したのは、四月二八日に新宿・アルタ前で行なわれた性差別に抗議する街頭イベント「#私は黙らない0428」でした。GW初日に元SEALDsの女性などが企画して街宣をやって、そこにセックスワーカーのひとも来てスピーチして、女子高生も主婦のひともいて。自分のレイプ被害を告白したひともいました。レイプされたのはそんな格好をしているからだと言われてそれが自分の心を殺したと、そして「私の選ぶ洋服は、あなたへの招待状でもなければ許可証でもない」という感動的なスピーチをして。街宣が終わったあともあちこちで女性たちが抱き合っていて、泣きながらも笑っているみたいな、凄く美しい光景が出現したんです。男性も登壇して、男の立場からセクハラを見たら、見て見ぬ振りせずに指摘することだと言っていて。なかなか日本で盛り上がらないと言われていた#MeTooだけど、何かが始まったと思うような街宣だったのですが、立て続けにTOKIOの山口達也さんの強制わいせつ問題やアラーキーのモデルだったkaoRiさんの「note」によるセクハラ告発「その知識、本当に正しいですか?」もありましたね。 
千田 
 アラーキーの問題はもっと取り上げるべきだと思うんですよね。やはり芸術の中で起きたことだからか、メディアであまり取り上げられない。
雨宮 
 だからこそヤバイっていう話じゃないですか。許可も取らずに写真集出版なんて有り得ない。私小説とか私(わたくし)ってつければ何でもOKなのか、日本で私小説文化みたいなものがあまりにもなあなあで来ちゃったことの弊害という感じもします。
千田 
 私小説もプライバシーの侵害ですよね。私はニューヨークにいるときに、アラーキーのドキュメンタリーフィルムを見たんです。kaoRiさんの告発した中に撮影中にカメラが入ることに対してクレームを付けると、お前を撮りに来てるんじゃない、俺を撮りに来てるんだとアラーキーがいうじゃないですか。その通りだなと。そのアラーキーのドキュメンタリーフィルムに、夫にも周囲にも黙って撮ってもらっているという主婦の女性が出ていて、そこにカメラが入ってるわけです。もちろん顔も出てるし、海外だからノーカットで性器も出ている。そんなこと絶対に事前に説明していないだろう、そのことの持つ意味をその女性は理解していなかっただろう、こっそりとアラーキーに撮ってもらおうと思ったら、全世界に自分の性器を見られることになるなんて、わかってたのかなぁと。

私は二年前に韓国に調査に行ったのですが、韓国では「ミラーリング」がすごく流行っていました。男と女を反対にするとこんなにヘンじゃない?ということをパフォーマンスとして見せるやりかたなんですが、面白い。今、韓国の方がずっと先行してる感じがありますね。韓国のひとたちは民主化運動をしてきてプロテストの文化というのがある。女のひとも運動に参加してきたから、心得ているし、男性の運動家も女性たちの運動を支える。それが日本には、ないですよね。
雨宮 
 去年の九月に韓国に行ったときに、フェミ運動がすごく盛り上がっていて、会う若いひとたちが女性も男性もみんなフェミニストですと自己紹介してくれました。
千田 
 昨年、ディオールで、「WE SHOULD ALL BE FEMINISTS(男も女もみんなフェミニストであるべき)」というロゴTシャツが出て話題になりましたが、私もバッタ物的なGUのTシャツを持ってます(笑)。(二〇一七年夏、GUから「YUP, I'M A FEMINIST(そう、私はフェミニスト)」「EQUAL TO YOU(君と私は平等)」の二種類のTシャツが登場した)
雨宮 
 そういうのが流行るってすごいですよね。
千田 
 ファッション・フェミでいい。フェミはカッコイイみたいに思ってもらいたいと思う。
雨宮 
 韓国ではフェミじゃないとダサいという空気すらあって、そういう空気が出来ているだけですごいなと思ったのですが、この前の街宣ではみんなフェミニストですって自称していて、フェミのイメージが変わってくるのではないかと思います。
千田 
 若い世代にとってフェミニストという言葉がむしろ新鮮なんですね。私が本を読んで涙していた七〇年代のウーマンリブがまさに第二波フェミニズムでした。女というアイデンティティを大事にして、リブは女の多様性にも自覚的だったけど、それでも女は女というだけで虐げられているという意味では、女の間で共通点が多かったと思うんです。でも第三波になるともう少しアイデンティティが流動的で、女であることがつねに自分を規定するということを、内側から崩していくような、脱構築的な手法に対しての親近性みたいなものがあるように思います。もちろん、名づけは名づけにすぎないんですけれど、第四波はそれをどう超えるのでしょうね。ネットの利用は確かに、新しい局面を切り開いてきているとは思います。
雨宮 
 そういう流れがあって今があるのですね。

今、大切だと思うのは、この「#MeToo」ムーブメントの中で、今まで我慢していたこと、「そんなこと言うとモテないよ」とか言われて口を封じられていたことをどんどん言葉にすることだと思います。空気は確実に変わっている。それにフェミは決して男性を敵視するものではない。男性にも「男らしく」とかの呪いがあるので、一緒に声をあげてほしいと思います。
1 2 3 4 5
この記事の中でご紹介した本
「女子」という呪い/集英社クリエイティブ
「女子」という呪い
著 者:雨宮 処凜
出版社:集英社クリエイティブ
「「女子」という呪い」は以下からご購入できます
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃/みすず書房
いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃
著 者:ウェンディ・ブラウン
出版社:みすず書房
「いかにして民主主義は失われていくのか  新自由主義の見えざる攻撃」は以下からご購入できます
Black Box/文藝春秋
Black Box
著 者:伊藤 詩織
出版社:文藝春秋
「Black Box」は以下からご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
雨宮 処凜 氏の関連記事
千田 有紀 氏の関連記事
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
学問・人文 > 女性学関連記事
女性学の関連記事をもっと見る >