学校教育の70年史1945年(昭和20)―2015年(平成27) 書評|(小学館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年9月30日 / 新聞掲載日:2016年9月30日(第3158号)

学校教育の70年史1945年(昭和20)―2015年(平成27) 書評
「読む歴史」として概観 現在の教育論議のルーツを見る

学校教育の70年史1945年(昭和20)―2015年(平成27)
編 集:一般財団法人日本児童教育振興財団編
出版社:小学館
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「読む歴史」として概観 現在の教育論議のルーツを見る 梶田 叡一
日本は1945年(昭和20年)8月、敵国として戦ってきたアメリカを中心とする連合軍に全面降伏し、その後6年間1951年(昭和26年)9月のサンフランシスコ講和条約調印まで、元敵国に占領統治され、独立国としての地位を失う、という歴史上未曾有の経験をした。

当然の事ながら、この占領統治によって、学校教育は「教科書への墨塗り」に象徴されるように激変し、また占領政策がアメリカと(当時の)ソビエト連邦との対立の中で変更されると「レッドパージ」に象徴されるようにまた大きく変わる、といった経緯を辿ってきた。更に、国の独立を回復して以降も、アメリカの緊密な連合国という位置を与えられ、その勢力圏に組み込まれて現在に至っている。当然の事ながら、学校教育も、今日に至るまで、そうした歴史的流れの中で展開されてきたわけである。

もちろん、どうして今さら「戦後70年」なんだ、という声もあるかもしれない。先の世界大戦など、さらには敗戦と占領など、すでに歴史上の出来事であって、現代日本社会とは関わりの無いことではないか、ということである。しかし、現代日本の社会のありようも、学校教育のありようも、70年前の敗戦による占領という形で異民族支配を受けたという衝撃的な経験の影響を様々な形で引きずっている。「70年」経っているにせよ、まさに「戦後」という表現こそが妥当するのではないのだろうか。

私自身、4歳の時に敗戦を迎え、1948年(昭和23年)4月に、鳥取県米子市立就将小学校に入学した。この2年前の1946年(昭和21年)3月にアメリカの教育使節団が来日し、学校制度の6・3・3制への転換、民主主義社会に相応しい学校教育の建設、といった占領下の教育改革の指針が打ち出されている。また、前年の1947年(昭和22年)3月には新たに学習指導要領一般編(試案)が出され、教育基本法と学校教育法が公布され、4月からは新学制による小学校・中学校が発足している。食糧難で国民の多くが飢餓状態にある中で、ララ物資による学校給食が始まり、脱脂粉乳を溶かしたミルクとコッペパンを学校で有り難く頂いたものである。そして先生が、「日本は今まで御飯と味噌汁と魚の食事をしてきたが今後はミルクとパンと肉の食事をするようにならなくてはアメリカ人のように頭が良く長生きする人にはなれない」と力説してくれたことも記憶にある。

時間は飛ぶが、体育の授業で剣道や柔道を再びやっていい(占領下では武道は軍国主義に導きかねないとされていた)とされたのは私が鳥取県立米子東高校に入学した1957年(昭和32年)春の頃のことであった。

さらに言えば、占領下に制定された教育基本法の改定が公的に提起されたのは、私自身も委員として参加した(総理大臣の諮問機関)教育改革国民会議の2000年(平成12年)12月の報告「教育を変える17の提案」である。これを基に私自身も参加した中央教育審議会の特別部会で議論がなされ、国会で改正案が審議され、2006年(平成18年)12月に新たな教育基本法が公布、施行されている。今日の学校教育が敗戦と占領の経験を引きずっているとの思いは、私自身の個人史的な実感でもある。

本書は、1945年(昭和20年)8月から2015年(平成27年)12月までの学校教育に関わる主なできごとを、各年ごとに見開き2頁にまとめた前半部分と、「教育基本法」「学校制度」「中央教育審議会」「学習指導要領」「学力観と教育評価」「情報化と授業改革」「道徳教育」など25項目の重要テーマについて歴史的経過と現状を解説する後半部分からなる。この70年間の教育の動きを、こうした形で「読む歴史」として概観しようという試みであり、非常に読みやすいものとなっている。本書を一読していただければ、現在の教育論議のルーツが意外な過去の中に潜んでいることも発見できるのではないだろうか。
この記事の中でご紹介した本
学校教育の70年史1945年(昭和20)―2015年(平成27)/小学館
学校教育の70年史1945年(昭和20)―2015年(平成27)
編 集:一般財団法人日本児童教育振興財団編
出版社:小学館
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