対談=武田砂鉄×貴戸理恵 いいじゃない!!豊かなだらだらコミュニケーション 『日本の気配』(晶文社)、『「コミュ障」の社会学』(青土社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月15日 / 新聞掲載日:2018年6月15日(第3243号)

対談=武田砂鉄×貴戸理恵
いいじゃない!!豊かなだらだらコミュニケーション
『日本の気配』(晶文社)、『「コミュ障」の社会学』(青土社)刊行を機に

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第2回
=セクハラへ「いちいち怒る」という抵抗=

貴戸 理恵氏
貴戸 
 昨今のセクハラ問題に、フェミニストのどれだけが、「いちいち怒る」という抵抗をしているか。私もフェミニストなので、反省させられます。武田さんがバラエティ番組での性差別発言にも、きちんと怒っている姿には、感動します。セクハラに触れること自体が不快なので、私はそもそもバラエティ番組をあまり見ないんです。でもそのことで、男尊女卑交りの会話や性的マイノリティ叩きに、いちいち声を上げて、いちいち抵抗するという、めんどうだけれど大事な作業が、手薄になっている。結果的に、差別の構造が温存され、社会に溢れる言説が貧困になっていく。

感情も瞬発力なので、日常的に怒りを押し殺していると、肝心のときに怒るための言葉や回路を持てなくなりますよね。女性たちは男性優位の歴史の中で、ハラスメントに対し、怒り方が分からなくなったところがあるのではないでしょうか。
武田 
 #MeTooで告発した女性に対して「なぜ今さら告発するの?」というような冷笑が向けられました。社会システムの中で抑圧され続けたからこそ、すぐには声を上げられなかった。告発によるリスクに躊躇するのは当然のこと。でもそれに対して、ともすれば、同じ女性の側からも、「嫌だったならなぜそこですぐに言わなかったの?」「誘ってたんじゃないの?」などと被害者側を非難する声まで上がってしまう。

海外で#MeToo運動が盛り上がり、たとえばハリウッドから上がった告発については、概括的にですが日本のワイドショーでも放映していた。しかし、ジャーナリストの伊藤詩織さんやブロガー・作家のはあちゅうさんなど、自分たちの世界に近い人の告発は、なかなか取り上げようとしなかった。
貴戸 
 痛まぬ腹ならぬ、痛い腹を探られるから、でしょうか。

#MeTooは、「私も」「私も」という横のつながりで、一つの運動になっていった成功例だと思います。でも、「いいね!」で共感的に広がることの可能性と、同時に脆さがあると思うんです。女性として連帯して、性差別に対して闘うというのはなかなか難しいことだと実感しています。それは、男性中心の社会で、女性は分断された存在として、個々に差別されてきたからです。

私がフィールドにしている「生きづらさ」の現場でも、「女性の生きづらさ」は確かにあるのに、それぞれが抱える問題をシェアして深めようとすると、様々な難しさがあります。

ですから#MeTooには、こんなやり方があったのかと、目が覚めるようでした。でも「そうそう、私も!」という感覚は消えやすいので、喉元を過ぎたら忘れられてしまいます。だからそれを掘り下げて言語化して、セクハラ被害が起こる構造の問題解明につなげるところまで、考える必要があると思います。
武田 
 女性同士が連帯しにくいというのは、具体的にはどこに躓きが生じることが多いのでしょう。
貴戸 
 例えば、世間が求めてくる「女らしさ」に乗れないという人がいます。化粧することがしんどくて、外に出るときに、女性としてのコスプレをしなければならない、という感覚を抱えている。

その一方で、男性依存のような、「女らしさ」に絡め取られる苦しさを抱えた人もいます。両方とも女性性を巡る生きづらさですが、お互いの立場を同じ根を持つ問題としてシェアできるかというと、感覚の上では、反発や嫌悪の方が顕在化してしまう。あるいはお互いの存在が、傷になってしまうのです。もう少し掘り下げることができれば、共通の構造の上にいることが見えるだろうと思うのですが。
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この記事の中でご紹介した本
「コミュ障」の社会学/青土社
「コミュ障」の社会学
著 者:貴戸 理恵
出版社:青土社
以下のオンライン書店でご購入できます
日本の気配/晶文社
日本の気配
著 者:武田 砂鉄
出版社:晶文社
以下のオンライン書店でご購入できます
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