『オリジン』(KADOKAWA)刊行記念 ダン・ブラウン来日記者会見|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月19日 / 新聞掲載日:2018年6月15日(第3243号)

『オリジン』(KADOKAWA)刊行記念 ダン・ブラウン来日記者会見

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ダン・ブラウン氏
五月二十八日、デビュー後初来日したダン・ブラウン氏が、新作『オリジン』の記者会見を行った。

ラングドンシリーズは、二〇〇三年三月に刊行された『ダ・ヴィンチ・コード』が、社会現象になるほどの驚異的な売れ行きとなり、五六か国に翻訳、総累計部数は二億部を超える。また今年二月に刊行された、人工知能と進化論がテーマとなった、シリーズ第五弾『オリジン 上下』(KADOKAWA)は、日本で二十二万部のベストセラーとなっている。

会見では、はじめにブラウン氏から挨拶があり、その後質疑応答へと移った。

    *

まず本作の「人工知能」というテーマについて、どのようなプロセスで選ばれたのか、という質問に対しブラウン氏は「私は一作を、三~四年かけて書きます。そのため、その間に私の関心が途切れないようなテーマを毎回選ぶように努めています。本作で人工知能を選んだ理由は、私たちが今まで見てきたどのような技術よりも、多大な影響を我々の生活に及ぼすと信じるからです。
オリジン 上(ダン・ブラウン)KADOKAWA
オリジン 上
ダン・ブラウン
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あらゆる技術は、善の用途にも、悪の用途にも使えるもので、そのため多くの人は、AIが賢くなりすぎて人類を滅ぼすのではないかと恐れています。一方では公害汚染、人口過剰、飢餓、環境問題といった世界の諸問題を、解決してくれるのではないかという期待を寄せています。私はオプティミストで、AIは様々なよいことのために活用できる、極めてパワフルな技術だと考えています」と答えた。
また、宗教と科学の対立は、初期作品からブラウン氏が追い続けてきたテーマであるが、あえてそうした今日的でデリケートな話題に挑む理由を問われると「小説は個人的にも、自分が関心を持つアイデアを追究する手段であり、問いを探究する手段です。私が育った家庭は非常に宗教的でしたが、一方で父親は数学教師でした。ですから、宗教と科学、両方の世界を家庭の中で味わい、混乱していました。私にとって、その二つの世界の相互作用を探究する手段として、小説が位置づけられています。
子どもの頃両親から、アダムとイブが源となって、この世の人類は想像されたと教わりました。しかし九歳のときに遠足で、ボストンの博物館に行き、類人猿から人間に進化したという展示を見て、不思議に思ったんです。そこで遠足から帰ると、神父にどちらが本当なのか聞きました。そうしたら神父は、いい子はそういう質問をしないんだと回答しました。その瞬間に私は、宗教に背を向けました。自分の知りたいことを質問してはならない、ということに怒りを覚えたからです。そこから科学の探究に入り、物理学、宇宙学、数学を学びました。物理学で原子よりも小さい単位に到達していくと、見えてくる景観が科学よりも宗教に似ていると感じ始めました。最近の素粒子物理学では、古代仏教の世界観の正確さが、示唆されています」

クリスマスを祝い、正月は神社に参る、日本の宗教観について、どう感じるか、という質問も出た。ブラウン氏は「日本人の宗教観はいずれ書きたいテーマの一つですが、今十分な知識を持ち合わせていないので、これからかなり勉強する必要がある」と話した。
オリジン 下(ダン・ブラウン)KADOKAWA
オリジン 下
ダン・ブラウン
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今作の舞台であるスペインについては、「子どものときに初めて訪れた外国がスペインでした。以来八~九回訪問しています。合計で二年ばかりスペインで生活し、セビリア大学で美術史を学びもしました。今作は古代と近代とを融合した内容です。スペインはいまだカトリックが根強い上に、AIの分野でもスーパーコンピューターの分野でもリーダーである。またラングドンを悩ませたかったので、現代美術の宝庫でもあるスペインは適切な場所でした」

そして、AIが人間の悪意や悪の思想を学習していくリスクについての質問には、「AIが人から間違ったことを学習してしまうことは、懸念するところです。特にAIに、人間の記録を見させ、読ませ、消化させるという手段が取られているということは、我々が制作したあらゆるテレビ番組、あらゆる歴史を消化するということになり、そこには極めて醜い側面があるからです。AIあるいは遺伝子工学の技術が、指数関数的に拡大している一方で、人間の哲学や倫理観や道徳は、二次関数的にしか拡大していません。ですからまもなく、あるいはもうそうなっているかもしれませんが、私たちが十分に安全に回答できる経験を持っていない、倫理的な問題点が、技術において台頭してくるのではないかと思います。これからAIの研究を進めていく上で、多くの科学者は遺伝子工学と同じような手法で、研究を進めていくことが必要であると進言しています。例えば、危険をもたらすようなウイルスを遺伝子工学的に再構築する場合には、完璧に封鎖された研究所においてしか、それを生成してはならないというルールがあります。AIの分野でも、閉鎖された環境のみで、AIが下界に飛び出して行かないような防止策が必要になるということです。ちなみに今、アメリカでベストセラーとなっている、Life3.0というAIに関する著作があります。いかにAIを管理していくのが難しいかという内容の本です。ご関心がある方には、お薦めします」

また、美術作品がブラウン氏の小説の創作にどのような影響を与えると感じるか、との問いには、「美術は小説のキャラクターであると位置付けています。アートが我々を人間ならしめているものだと感じています。アートは文化、信念、夢、希望、恐れの象徴として作成されている。ラングドンはそのシンボルの研究者で、彼はイメージによる心の疎通を一つのテーマとして持っているわけです。私の小説で、いくばくかでも読者が、美術に対する関心や熱意を刷新し、あるいは美術への理解をいくばくかでも深めていただければ幸いです」と話した。
この記事の中でご紹介した本
オリジン 上/KADOKAWA
オリジン 上
著 者:ダン・ブラウン
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
オリジン 下/KADOKAWA
オリジン 下
著 者:ダン・ブラウン
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
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