【横尾 忠則】今週は絵との対話。夢に死者オンパレード|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2018年6月19日 / 新聞掲載日:2018年6月15日(第3243号)

今週は絵との対話。夢に死者オンパレード

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中村勘九郎さんと(撮影・徳永明美)
2018.6.4
 NHK大河ドラマ「いだてん」のタイトルロゴの制作を機にポスターの依頼を受ける。「いだてん(韋駄天)」とはインドのシヴァ神の子で足の速い人のこと。放映は来年から、主役は中村勘九郎さん。30歳以下で「いだてん」の言葉を知らない人が結構いるそうだ。戦前生まれのぼくは知っているけれど、日常的にはあまり使わなかった。

本紙6月1日の日記に死んだタマが住んでいるという家を訪ねる夢を書いたが、担当編集者の角南さんに「タマの命日が近かったのでは?」と言われてゾゾゾーと寒気が背筋を走った。タマの命日をすっかり忘れていたが夢を見た5月31日の夜12時頃タマが死んだ。命日真最中の夢だった。角南さんが言ってくれなきゃ、思い出せなかった。タマと角南さんとが通じていたんだ。

2018.6.5
 〈出先きで妻が「さあ早く着替えて、お見合いに行きましょう」とせき立てる。「お見合い?」、いつそんな話になったのか初耳だ。ぼくは妻帯者で間もなく82歳だ。なんてこった!? 料亭の和室にはすでに20人ばかりの人達が二手に分かれて向い合って座についている。ぼくの前方に座っている黒い着物の40がらみの女性がお見合いの相手らしいが、全くぼくの好みではない。相手側のひとりが「若い頃、風呂に入ってお互いにアソコを見比べてワーワー言ったことはありますか?」と質問する。馬鹿じゃないの! また別のひとりが「ジョン・レノンがピストルで遊んでいたので、デヴィッド・ボウイがジョンを拳銃魔と呼んでいました」とひとり言を言う。それにしてもぼくと並んで座っている妻は実に奇なり、と思う〉。この辺りで夢の持久力が失われ、この後の展開は残念ながら予想がつかないまま終ってしまった。

2018.6.6
 朝から小雨。アトリエに着くなりウグイスが一声。

夕方、朝日新聞の書評委員会へ。雨のせいか出席率低調。

2018.6.7
 西脇市岡之山美術館の山崎さん、竹内さん来訪。9月に予定されている郷里をテーマにした展覧会の打合せ。

しばらく行方不明になっていた絵が、ある有名なコレクターの所蔵になっていることが判明。その方は他にも2、3点所蔵されていることが判った。作品は消滅しない限り、どこからともなく出てくるものだ。すでに海外で発見されたものも3点。あとイタリアで不明になっているのもある。

カルティエ現代美術財団から追加依頼された10点ばかりの肖像画もコレクションされることになった。

2018.6.8
 終日、朝日新聞の書評本を読むのと書くために絵の制作は中断。本を読むのが遅いだけではなく忘れるのも早い。時には二度読むことがある。それでも覚えていないことがある。読み終っても断片的にしか覚えていないので、順序立てて語ることができない。書評でも引き受けないと本を読むチャンスがないと思って引き受けたが、仕事で読むのは読んだことになっていないような気がする。無意識に頭に入っていると慰めてくれる人はいるけれど、そうかなあ。

この間、NHKの大河ドラマ「いだてん」のロゴをツイッターで報告したら、その反響が凄くNHKも驚いたそーだが、実はロゴはまだ発表段階ではなかったそーだ。そんなこと知らない。だけどあんまり反響が多いので、かえってよかったとも言われる。テレビ局にはそれなりの戦略があるようだ。ゴメン、ゴメン。

2018.6.9
 昨夜は3時間眠ったところで朝まで眠れず。仕方ないので別の書評対象の本を読む。寝入りばなの3時間はノンレム睡眠で、この間は熟睡するらしいが、熟睡感はあまりない。夢はレム睡眠時の方がよく見るし、覚えている。だから昨夜は夢も無い。

2018.6.10
 〈ぼくがキュレーターになって、ピカソ、デュシャン、キリコ、ウォーホル、他にピカビア、マン・レイの姿もある。新聞というレディメードをそれぞれの巨匠たちがどう作品化するか愉しみだ。デュシャンは早々に新聞紙上にスパンコールを貼りつけようとしている。全員が死者。生前とは異なる作品を期待したい。彼等の死後の作品はこの現世でどう評価されるか愉しみだ。実相界の評価の基準は現世にあるのではなく、霊界にあることを現世作家はどれだけ認識しているだろうか〉。夢のような夢だが、未来では決して夢ではないかも知れない。

日曜日はマッサージの習慣がついてしまった。雨が強いのでマッサージ師の萩原さんがアトリエまで車で迎えに来てくれて、終ったら自宅に送ってくれる。

今週は絵との対話で、これという話は夢ぐらいで死んだ人のオンパレード。日記を面白くするために誰かに会うとか変ったところに行けばいいのだけれど、面倒臭い。せめて勘九郎さんとのツーショットで〆ましょう。
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