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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年6月19日 / 新聞掲載日:2018年6月15日(第3243号)

連 載 仏映画批評の歴史 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く60

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20歳頃のドゥーシェ(右)と6歳上の姉(中央)、1950年頃
HK 
 以前、映画と文化の関係についてお話ししていただきました。ドゥーシェさんの考えによると、映画の中には文化が、ひいては生活が、反映されているということでした。いかにして、そのような考えにたどり着いたのでしょうか。アンドレ・バザンや20世紀初頭の映画批評の流れにある、と僕は考えました。
JD 
 それよりも複雑な歴史によるものです。より大きな文化的歴史の中にあります。芸術とは単純なものであるという態度を拒否する、フランス的批評の流れによるものです。そのような流れは16世紀に生まれ、18世紀に発展しています。古くからフランスの批評の中には、芸術とは社会性を表現するための方法である、もしくは思想の社会的面を表現するための方法であるという考えがありました。非常にフランス的な方法です。例えば、ドイツの文化においては、芸術は哲学と結びついている、と私は考えています。ドイツ人の芸術家たちは、芸術を哲学と捉えています。フランスの芸術は哲学ではありません。芸術とは考えです。
HK 
 フランスにおいての芸術とは、考えの実践だと言えるのではないでしょうか。
JD 
 それは非常に難しい問題です。芸術と文化についての関係以上に、返答が難しいことです。芸術が技法によって成り立っているという意味においては、実践だと言えます。全ての芸術には技法がつきものです。それゆえに、考えが実践されています。しかし、この点については、これ以上の返答は控えます。複雑な問題なので、慎重にならなければいけません
HK 
 映画批評と文化の関係についてですが、例えばバザンやロジェ・レーナルトは、映画とその他の芸術の関係について考察をしていました。
JD 
 その通りですが、彼らにとって必要だったのは、映画と他の芸術の比較です。一方で、私たちの世代にとって、比較はすでに問題となりません。バザンは、映画が一つの芸術であるということを示す必要がありました。これについては、少しフランスの映画の歴史を追う必要があります。1895年に、映画が姿を表します。その当時は、誰も映画がいかなるものであるかを理解していませんでした。映画とは、動く写真でした。動く写真の時代は、おおよそ15年ほど続きます。その時代は、初期映画の時代と呼ばれています。新しい表現媒体を通じて、いかにして新しい表現形式(=映画)を生み出せるのかはよく理解されていませんでした。1910年ごろには、映画とはそれまでに存在していなかった芸術ではないかというアイデアが姿を表します。しかし、それでも映画という芸術を見出すために、手探りの状態でした。映画が芸術となるのではないかと探求する人々がいた一方で、映画によってもたらされたものは芸術でもなければ第七芸術などにはなり得ないという態度をとる人々も多くいました。
HK 
 それでもフランスにおいては、とりわけモンマルトルのあたりにいた芸術家の集団の中に、「映画こそが総合芸術である」という態度を取る人もいたはずです。
JD 
 はい。映画が芸術であることを拒否する人がいた一方で、「映画とは芸術であり、総合芸術である」と主張する人々もいました。つまり、全ての芸術は映画の中にこそあるという見方です(笑)。そのような論争が30年近く、1940年から1950年頃まで続きます。そのような歴史の中に、アンドレ・バザンが登場します。そして、バザンは「映画とは芸術である」という考えを引き継ぎ、「映画とは何か」という問いを立てたのです。
HK 
 長年の論争に対する、バザンの結論は「映画とは何か」ということですか。
JD 
 バザンの答えは「映画とは何か」という問いです。しかし、バザン一人で、そのような結論に達したのではなく、ルイ・デリュックやレーナルトの考察、その他の議論や書き残された文章を踏まえた上で、論考しています。映画思想の歴史に対する歴史的省察を行なっていたと言ってもいいかもしれません。そこから「映画とは何か」という問いが生まれています。その点で、バザンは慎重でした。 <次号へつづく>
(聞き手=久保宏樹/写真提供‥シネマテーク・ブルゴーニュ)
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