魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード 書評|ナタリー・セメニーク(グラフィック社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年6月21日 / 新聞掲載日:2016年1月8日(第3122号)

魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード 書評
世界の黒猫のエピソード
すべてのページに黒猫が登場する

魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード
著 者:ナタリー・セメニーク
出版社:グラフィック社
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はじめから私事で恐縮なのだけれども、一昨二〇一四年の春から初夏にかけ、黒猫について調べていた。二〇一五年九月に刊行されることになる『くろねこLOVERS』(ファミマ・ドット・コム)に掲載するエッセイの下調べである。写真が主で、文章はほぼ拙文のみだったから、黒猫をめぐって幅広くと考えていたのだが、猫についての資料は数えきれないほどあっても、黒猫に特化するとほとんどみつけることができない。結局、寄せ集めのような文章になってしまった。フランス語でもそれらしき本はないかと調べたのだったが、『魅惑の黒猫』はみつからなかった。それもそのはず、本書のオリジナルがでたのは十月だったのである。残念……。

本書はすべてのページに黒猫が登場する貴重な本である。黒猫が好きな人はもちろん、ふつうに猫に興味があるという人でも、この黒猫という特別視がどういうことなのかを理解するために、手にとってみるべきかもしれない。(黒)猫好きをまず射程にいれているから、翻訳はです・ます調の親しみやすい文体。どのページにもヴィジュアルがある。切り口はさまざまだから、ランダムに開いて眺めるだけで楽しいし、何らか知識を得ることができる。それはオリジナル本でも変わらない編集方針だったはずだ。また「文学の中の黒猫」というパートには、ポー『黒猫』はもちろんだが、ゴーティエ、コレット、ラグノーの書いたものからの抜粋が掲載されているところも、ちょっとフランス風のペダントリーであるのかもしれない。これは目次からはわからない。

とはいえ、世界の黒猫のエピソードがあるか、といえばそんなことはない。古代エジプトのバテスト女神や美しい品種ボンベイについてははじめのところにでてくるものの、こうした種類の本が多くそうであるように、もともと出版された国や地域でのことが最優先。だからヨーロッパ、フランスでの歴史や伝説、民間伝承、エピソードが主として―こうした本でもなければブルターニュの猫のはなしに出会う機会があるだろう―扱われる。歴史の、そのときどきで、黒猫がどうみられてきたのか、そして現代でどう愛好されているのか。黒猫を飼っているセレブは誰か。映画やアニメのキャラクターで知られている黒猫は。それぞれはトピックのようにみえもするし、事実そうではあるのだが、それら個別のものがまとまったところで、読み手はふと、おもうのだ。人がべつの動物、生命を好んだり嫌ったりするそのことについて。動物たちのその受難についてを。ただ、猫を、ではなく、黒猫に特化することでみえてくるもの。それはことばによって左右される人の愚かさであり、文化なるものの不安定さだ。晩年の某哲学者ではないけれど、動物から学ぶ、動物と人とのあいだをみることで、考えられることは多くある。

ちなみに原書の表紙はちょっと怖いかんじの猫の顔。それが翻訳では媚びないながらもかわいらしいきょとんとした表情になっている。このあたりにも、猫のみならず、それぞれの文化の違いをみいだすことができるのは言うまでもない。(柴田里芽訳)
この記事の中でご紹介した本
魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード/グラフィック社
魅惑の黒猫 知られざる歴史とエピソード
著 者:ナタリー・セメニーク
出版社:グラフィック社
以下のオンライン書店でご購入できます
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