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更新日:2018年6月22日 / 新聞掲載日:2018年6月22日(第3244号)

第三四回 太宰治賞 贈呈式開催

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第三四回(平成三〇年度)太宰治賞(筑摩書房・三鷹市主催)の贈呈式が六月十二日、千代田区・如水会館で開催された。今回、応募総数一三一二篇・最終候補四作品の中から受賞作に選ばれたのは、錦見映理子氏「リトルガールズ」(記念品と賞金一〇〇万円/にしきみ・えりこ=東京都出身、在住。一九六八年生まれ)。

太宰治賞は一九六四年に筑摩書房が創設した小説の新人賞だが、一九七八年に筑摩書房が会社更生法の適用を受け、第十四回をもって中断、しかし一九九八年太宰治没後五〇年を機に、筑摩書房と三鷹市の共同主催で復活を果たした。今年は再開後二〇回目、通算三四回目の授賞。選考委員は、加藤典洋、荒川洋治、奥泉光、中島京子の四氏。

選考委員の加藤典洋氏は、「今年は非常に水準が高くて票が割れた。最終的に「リトルガールズ」に決まったが、その理由は僕が暴力的に大声を張りあげて暴れたから(笑)」と会場を沸かせ、「この作品のイメージは、ヘンリー・ダーガーの描く女の子。その女の子にはおちんちんがついていて、女の子におちんちんがついていることでムテキ(無敵)である。ところが、誰かを好きになるとおちんちんがなくなってムテキでなくなる、そこからはじまる話だと。作品の登場人物の中で僕が一番惹かれたのが小夜という中学生の女の子。女の子が好きなムテキの女の子だが、初めて人を好きになる中で女の子がそのムテキさをなくす。そこに僕は打たれて新鮮なものを感じた」と、作品の魅力を語った。

錦見 映理子氏
受賞者の錦見映理子さんは、この作品を書こうと思ったきっかけを、ある若い女性たちのツイートを見かけたことだったと語り、

「出会いたくない、恋愛なんて好きじゃないんだという呟きを何度か見かけて、これは一体どういうことなんだろうと興味を持った。まずは人を好きになるって一体何なのか、そこから考え始めて半年ほどかけて書き終えた。書き終えて気づいたことは誰の恋愛も成就しないものを書いてしまったということだった。私は今まで短歌を書いてきたが、短歌を読んでくれる人は世の中にほとんどいないし、世間の価値観ともだいぶ合わない。でも、大勢に理解されなくても、私にとっての価値とか幸福というものは短歌を読んだり書いたりする、ごく個人的な活動の中にこそあった。作品中の登場人物たちも少しずつ世間の価値観と合わないものを持っている。私は多分その(ツイートの)若い女性たちに向かって、世間の価値観や抑圧から自由になれる場所をどこかに確保してほしい、誰にも理解されなくても自分一人の価値観だけで強く生きていける方法がきっとあるからと、そういう気持ちをどこかに持ってこの作品を書いていたような気がする。今まで誰にも読まれなくても短歌を書き続けてきたように、これからもあきらめずに小説を書いていきたい」と、受賞の喜びと覚悟を語った。

尚、贈呈式の挨拶で、筑摩書房代表取締役社長・山野浩一氏より、太宰賞再開以来選考委員を務めてきた加藤典洋氏が今回をもって退任することが発表された。次回からは、第二一回大宰治賞受賞者の津村記久子氏が任に就く。
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