八重山暮らし(46)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

八重山暮らし
更新日:2018年6月26日 / 新聞掲載日:2018年6月22日(第3244号)

八重山暮らし(46)

このエントリーをはてなブックマークに追加
沖縄の音楽家、海勢頭豊氏作詞作曲の「月桃」に歌われるゲットウの花。

(撮影=大森一也)
月桃の花


おんなの首筋が震えている。口を開き、言葉を絞り出そうとあえぐ。両の目から、とめどなく涙がこぼれる…。家庭を築き、子や孫を授かり至福の時を過ごしてきた。それでも生涯、慟哭の日々がまぶたの裏から消えることはなかった…。

六月二十三日、沖縄戦終結の「慰霊の日」。旅から来た私にとって無学を痛烈に恥じる日となる。

大戦末期、八重山ではマラリア有病地の山岳地域、密林への強制避難命令がでた。食糧不足のため衰弱した人びとが次々とマラリアの高熱に倒れる。治療薬は供与されず、為す術もないまま病は爆発的に蔓延した。1945年の患者記録は住民の二人に一人が罹患とある。敗戦後も尚続き、多くの犠牲者がでた。

沖縄戦ゆえの「戦争マラリア」の悲劇…。島に暮らし、初めて知った史実だ。

六月二十三日待たず

月桃の花 散りました

長い長い 煙たなびく

ふるさとの夏

慰霊の日に歌われる「月桃」。島人に古くから愛されてきた花だ。純白の月桃が、こぼれるように咲き誇る若夏の季節。沖縄戦は激化の一途を辿った。
「当時の様子を教えて…」

愚かな質問をした。そのえげつなさを忘れることができない。二十年を経ても。悔恨のため息が楔となって、この地で「月桃」の歌に耳を傾けている。
(やすもと・ちか=文筆業)
このエントリーをはてなブックマークに追加
安本 千夏 氏の関連記事
八重山暮らしのその他の記事
八重山暮らしをもっと見る >
人生・生活 > 生き方関連記事
生き方の関連記事をもっと見る >