土田知則×巽孝之トークイベント(東京堂書店)載録 ポール・ド・マン事件とは何だったのか!? 『ポール・ド・マンの戦争』(彩流社)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 特集
更新日:2018年6月22日 / 新聞掲載日:2018年6月22日(第3244号)

土田知則×巽孝之トークイベント(東京堂書店)載録
ポール・ド・マン事件とは何だったのか!?
『ポール・ド・マンの戦争』(彩流社)刊行を機に

このエントリーをはてなブックマークに追加
知の巨人ポール・ド・マンが戦時中に寄稿した「親ナチ」的と目される一篇の記事を巡り、欧米を中心に言論界を大きく揺るがす騒動に発展した「ド・マン事件」とは何だったのか。

問題の記事を精緻に読み、また若き日のド・マンの思想を考察して、事件の正体に迫った『ポール・ド・マンの戦争』が彩流社から刊行された。

本書著者で千葉大学大学院教授・土田知則氏と慶應義塾大学教授・巽孝之氏、日本におけるポール・ド・マン研究のトップランナー二人によるトークイベントが東京堂書店神田神保町店で行われた。その模様を載録してお届けする。 (編集部)
第1回
若きド・マンの文章を「精読」、検証する

土田 知則氏
土田 
 この『ポール・ド・マンの戦争』は私がポール・ド・マンについて書いた二冊目の本です。

この本のお話に入る前に、私とド・マンの関わりを簡単に知っていただくために、以前書いた『ポール・ド・マン ―言語の不可能性、倫理の可能性』(岩波書店)のことを少し申し上げます。この本はド・マンの主要著作である『読むことのアレゴリー』(岩波書店)、『盲目と洞察』(月曜社)等、彼の主要なテクストを「私なりにどう読むか」ということに焦点を当てているので、えてして入門書や解説書のように受け取られがちなのですが、決してそういった類いの本ではなく、むしろ私がド・マンの難解な理論に体当たりして書いた内容のものである、ということをお断りして、今作『ポール・ド・マンの戦争』のお話にうつりたいと思います。

本書は前作とは趣きが変わり、理論的な部分から少し離れて人間ポール・ド・マンを掘り下げています。特に、亡くなってから徹底的にバッシングされた理由の解明が主目的で、彼が若い頃に書いた「対独協力」的、「ユダヤ人差別」的と見做される文章がどういった内容なのか、その記事を書くに至った背景も含め考察をすることで、もはや定説となってしまった悪しきド・マン評に対する見直しを図っています。
巽 
 冒頭、土田さんがお話しになった『ポール・ド・マン』という本は理論的に非常に高度で、ある種、哲学的な探求を試みていらっしゃいます。それに対して本書は「脱構築批評」理論を打ち立て欧米の言論界で脚光を浴びる以前の、若きジャーナリストとしてのド・マンの肖像に迫っていまして「ポール・ド・マンがポール・ド・マンになる前」に彼は一体どういった生活を送り、モノを考え、どのような内容の記事を発信していたのかという点にフォーカスした内容ですね。そして後世、特に一九八三年の没後、一九八七年に発掘され、彼の評価を決定付けた戦時体制下における一篇の記事に対し土田さんは徹底的な「読み」を行うことによって、青年ド・マンのテクスチャリティを分析しています。
土田 
 一篇の記事が発端となり「ポール・ド・マン事件」という当時の言論界のあり方を根底から揺るがしてしまうほどの騒動が勃発してしまったわけですが、事件の原因はド・マンだけにあったのだろうか、きちんとした議論がなされていたのだろうか、といった点について私なりの理解を紹介しています。
巽 
 私は本書はもちろん、これまでに土田さんが発表した論文などにも目を通しているので、大体のご主張は理解していますが、過去に土田さんのご著書などを読んだことのない方がこの本を読むと、第一印象としては、これまで盟友ジャック・デリダを中心として繰り返されてきた「ド・マン弁護の書」のように読んでしまうかもしれませんね。
土田 
 あるいは土田が独りよがりでド・マンを擁護しているのだろう、と受け取る方も中にはいらっしゃるかもしれません。ただ、私自身ド・マンとは二十年以上の付き合いがあって、世間が下したド・マンの悪評には全く賛同できなかった。むしろ、何が悪かったのか、という思いが常にあったため、若き日のド・マンの文章を「精読」し、検証を試みたわけです。
巽 
 事件の火種になった記事について、例えばジャック・デリダやオルトウィン・ド・グラーフ、J・ヒリス・ミラーといったド・マンと関係の深かった面々も土田さんと同じベクトルの受け止め方をしています。
土田 
 そういった意味でも本書は、私の敬愛する批評家たちの力添えがなければ書くことはできなかった、といっても過言ではないですね。
2 3 4 5 6
この記事の中でご紹介した本
ポール・ド・マンの戦争/彩流社
ポール・ド・マンの戦争
著 者:土田 知則
出版社:彩流社
以下のオンライン書店でご購入できます
盗まれた廃墟  ポール・ド・マンのアメリカ/彩流社
盗まれた廃墟 ポール・ド・マンのアメリカ
著 者:巽 孝之
出版社:彩流社
以下のオンライン書店でご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
土田 知則 氏の関連記事
氏の関連記事
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
学問・人文 > 社会学関連記事
社会学の関連記事をもっと見る >