「夜郎戯暦」が本になりました|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月26日 / 新聞掲載日:2018年6月22日(第3244号)

「夜郎戯暦」が本になりました

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夜郎戯暦(安倍 夜郎)双葉社
夜郎戯暦
安倍 夜郎
双葉社
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本紙連載「夜郎戯暦」が単行本になりました。二〇一一年五月から二〇一八年一月までの月一連載から、各月五枚ずつセレクトされています。どれも既知の作品ですが、今回加わった著者コメントと合わせて見ると、新たな発見があちこちにあります。 そもそも「毎月、文学者や著名人の忌日に合わせて、肖像を描いてもらう」というようなゆるい企画だったものが、安倍さんの手にかかり日付を土台に、過去の出来事と人物が結び付けられ、〈あったかもしれないワンシーン〉が魅力的に生み出されることとなりました。

〈朴槿恵生誕〉と〈「徹子の部屋」放送開始〉を合わせて描いた二月二日の一枚は、徹子の部屋で対面している二人の目線が、絡まることなく笑顔。ちょっと怖いです。誕生日が一日違いの、やなせたかしさんと阿久悠さんは、二人でノリノリでカラオケ、歌っています。「進化論」のダーウィンがスプーンを握りしめ、レトルトカレーの出来上がりを待っている一コマ。閏年生まれの赤川次郎さんは誕生日だけ数えるとまだ十六歳(当時)。子どもみたいにケーキの蝋燭を吹かんとする横にいるのは三毛猫。どれも見たことはないけれど、これこそ素ではないかと思う表情です。

〈暴力団対策法〉と〈育児休業法〉を合わせた一枚は、いかつい顔で子どもをあやすその道の方々の佇まいが笑いと哀愁を感じさせ、沈みゆく日本を前に海にプカプカ浮きながら難しい顔で原稿を書く小松左京、河童ふうに頭を刈られた芥川龍之介、レモンパック中の梶井基次郎、赤線の女性が名残惜しげに手を振る吉行淳之介、妊婦のモナ・リザ、五月人形と化すマルクス、きびきびラジオ体操をするフロイト、しどけなくこけしをいじくる阿部定、自由の女神となった原節子、ガリレオの前に回るのは地球ではなくて寿司、法隆寺で柿食うマツコ・デラックス、赤塚不二夫さんといっしょに矢沢永吉さんのシェーは、ここでしか見られません、たぶん。

ティファニーの前でラムネ瓶を口もとにあてたオードリー・ヘプバーン、これはラムネを呑んでいるのではなく、瓶を吹いていた、と解説を読んで始めて知りました。言われてみれば確かに…。「ティファニーで朝食を」のヘプバーンなら、ラムネ瓶があればきっと、子どものように吹いてみただろうと思います。
* 本書の刊行をきっかけに、少しだけ安倍さんにお話を聞きました。まずは、今さらですがぺンネームの由来。〈夜郎自大〉という古事成語だそうです。「自分の力量を知らない、井の中の蛙というような意味ですね」と安倍さん。

次に「夜郎戯暦」の中で気に入っている一枚を伺うと、時刻表ミステリの松本清張と西村京太郎が電車ごっこをしている〈十月五日・時刻表記念日〉の絵とのこと。普段の漫画では、映像を編集するように、ストーリーが視覚的な流れとしてスーッと入ってくるようなコマ割りを大事にしている、という安倍さん。一コマの「戯暦」では、説明的にならないように。一枚の絵としてパッと目に飛び込んできて、よく見るといろいろ発見があるようなものを描こうとしています、とのことでした。

ディテールにもこだわった一枚一枚を、堪能できる一冊です。さらに焼肉好きの女の子・はらみちゃんの4コマ漫画「モ~モ~ はらみちゃん」も初登場。
この記事の中でご紹介した本
夜郎戯暦/双葉社
夜郎戯暦
著 者:安倍 夜郎
出版社:双葉社
以下のオンライン書店でご購入できます
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