都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画 書評|庭 伸(花伝社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月5日 / 新聞掲載日:2016年2月5日(第3126号)

都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画 書評
低密化の先にある可能性 
縮小する都市からポジティブな未来を描く

都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画
著 者:庭 伸
出版社:花伝社
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本書は、人口減少時代における都市とその空間がどのように変化し、またこれに対する都市計画がどのようにあるか(あり得るか)について議論した本である。大学で都市計画の実践を踏まえて研究をする著者が、縮小する都市からポジティブな未来を描くというものである。都市とはそもそも豊かな生活をするという目的のための手段の集合体であると著者は投げかける。そこでの方針は都市をつくる(こわす)のではなく、都市をつかうのだという点に共感を呼ぶ。

本書がポジティブな未来を描くために紙幅を割いて論じているのは、20世紀の成長拡大型の都市のつくられ方とそれを支えてきた都市計画の見方そのものの転換である。20世紀の都市は、都市に流入した人びとによる人口増加を背景に、彼らが家を買い、そのための道路等の公共投資を行うことで都市を拡張してきた。つまり、インフラ整備の市場化によって都市がつくられたのである。そしてこれらの多くの空間は、今負債を返済し終えて脱市場化しつつある状況にあり、場合によっては空き家や空き地化している。

未経験の人口減少に対応した都市づくりを図るとは、これまでと全く異なる都市像を志向することではない。住宅取得という内在した市場化の力を上手く捌くために、20世紀型の経済成長を基盤とした都市計画は、住宅のための住宅地といった土地利用の純化を目指した。しかし、これからは空き家、空き地などの低密化(本書ではスポンジ化)した空間に多様なライフスタイルを持った個人の利用によって多様な混在がもたらされる。一方で都市縮退による都市中心に回帰するコンパクトシティの動きを短期的に誘導することは、一度つくられた空間資本を再度市場化することで人口移動を促すもので、合理的な選択とは言い難い。そこで、多様な混在をいかに全体調整しつつ個別的に豊かな空間にするかが求められ、全体の器としての都市空間の規模は短期的には大きく変わらない。

「都市をたたむ」の英訳は「shutdown」ではなく、「foldup」でいずれ閉じたものが再度開く可能性を著者は示唆している。都市をたたむとは、拡張した都市を単純に元に戻すように縮退させるのではなく、住宅で言えば同時多発的に新築と空き家化が同じ町内でランダムに起こる中で新しい土地利用を目指すことである。こうした動きは全体として都市を低密化しつつ、常に小規模な土地で同時に起こるため、わかりやすい都市空間の構造転換を動機づけにくい。低密化がどの程度まで進むのか、それによって都市経営は維持できるのか等まだ解かなくてはいけない課題がそこにないわけではない。しかし、低密化の先に、個々人の介入によって豊かな生活をおくるための空間的余地と可能性があることは重要な指摘である。本書で紹介される時限的な空き家活用による新しいコミュニティの場の創出や空き家空き地活用を含めた地域住民を巻き込んだ計画づくりなど、著者の関わる実践事例はそうした萌芽の一つと言える。

このような現象や実践は見えにくいが、身近なところで既に起こっている。スポンジとなった都市空間に豊かな水としての生活を満たすことは、スポンジである都市の特性次第ということのようにも見える。自分の住む都市がどのような都市か読み解き、また自らの暮らしがどうありたいかを問うことが非常に重要であるようにも思える。本書は20世紀の都市の常識を疑うことを通じて、こうした不可視であるがゆえに、都市に生活する読者の想像力を掻き立てる。また、次代にどのようなたたみ方を持って新しい空間と生活を創造するか我々に試されているとも言える。
この記事の中でご紹介した本
都市をたたむ  人口減少時代をデザインする都市計画/花伝社
都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画
著 者:庭 伸
出版社:花伝社
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