第31回三島由紀夫賞・山本周五郎賞、第44回川端康成文学賞贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年6月29日 / 新聞掲載日:2018年6月29日(第3245号)

第31回三島由紀夫賞・山本周五郎賞、第44回川端康成文学賞贈呈式開催

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左から、保坂和志氏、小川哲氏、古谷田奈月氏
6月22日、東京都内で第31回三島由紀夫賞と山本周五郎賞、並びに第44回川端康成文学賞の贈呈式が行われた。受賞作は三島賞が古谷田奈月氏の「無限の玄」(「早稲田文学増刊 女性号」)、山本賞が小川哲氏の『ゲームの王国』上・下(早川書房)、川端賞が保坂和志氏の「こことよそ」(「新潮」平成29年6月号)だった。

〈古谷田氏の挨拶から〉

「早稲田文学」に載せた作品で受賞したということで最初に一言言わなければと思っているのが、先日の報道で皆さんご存知だと思いますが、文芸評論家で早稲田大学教授の方に、セクハラ疑惑です。私自身は内部の人間というわけではないのですが、今回の受賞作も、その次の号に出ている作品も、両方ジェンダーに関わる作品ということもあり、また最近早稲田文学の編集部に用事があって、何度も早稲田大学に訪れたりと、結構近くに感じていたこともあるので、あのような報道が出たことに関しては非常に残念に思っています。ただ、あの報道の中で唯一希望があったと思ったのが、告発した女性の言葉の、「たとえ匿名で告発したとしても、個人攻撃など被害がなにかしら起きるかもしれないという怖さはありました。でも最近の、#Metoo運動を見て、自分も声を上げていいんだなと思い決意しました」というものでした。彼女にとって#Metooというものがあるかないかというのはすごく大きな違いだったと思います。もし#Metooがなかったら、私たちはこの事件を知らずにいて、彼女一人が辛い思いを抱えていたということになっていたかもしれません。この報道がなされる前に、私が今日ここでお話しようかなと思っていたこととちょっと関係するのですが、「早稲田文学」の女性号は発売前からも発売後も反響が大きく、多くの人に読まれました。たぶん普段文芸誌など手に取ったこともない人も読んだ号だったのではないかなと思うのですが、私がその中でとても感動したのが、ただ反響があって盛り上がったねで終わらず、これに実際に応答した雑誌があったということでした。具体的に言えばそれは集英社の「すばる」5月号で、「ぼくとフェミニズムという」特集が組まれたことでした。女性号が女性側からの声をまとめて発信したことに対して、「すばる」が男性側からの声をまとめて応えるという構図が出来上がったのを見て、私は言論が生きていると感じました。作家として文芸というものにシーンがあるかどうかも分からず、自分がその中でどこに位置するかも全然見えないなか、一人ひとりの作家を相対的に見てシーンを立ち上げていく仕事、たとえば今回のように特集に対して特集で応えるといったように、分かりやすく目に見えるかたちにしていくことは編集者にしか出来ない仕事です。そうしたやり取りが今後活発になっていったら、どんどん業界が元気になり、書店の店先からよりストリートに近い部分に、直接ジャンルがコミットしていけるような動きが出てくるのではないでしょうか。そうなったときに、#Metooと今回告発した女性との関係のように、今この瞬間に言葉を欲している人のところに届く言葉がある。そんな幸福な出会いが生まれる可能性が増えていくのではないかと思います。編集者や出版社が作家に期待を描くのと同じように、作家も編集者に対して期待を持っています。そこでしか作れないものを楽しみに、今後も一緒に文芸のシーンを盛り上げていきましょう。
この記事の中でご紹介した本
ゲームの王国 上/早川書房
ゲームの王国 上
著 者:小川 哲
出版社:早川書房
以下のオンライン書店でご購入できます
ゲームの王国 下/早川書房
ゲームの王国 下
著 者:小川 哲
出版社:早川書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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