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八重山暮らし
更新日:2018年7月3日 / 新聞掲載日:2018年6月29日(第3245号)

八重山暮らし(47)

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芸能の島
出番直前まで練習を繰り返す踊り手たち。竹富島種子取祭にて。 (撮影=大森一也)
 星明かりに照らされた夜道を足早に行く…。路地を横切る細長い影にびくつき、歩がゆるむ。いや、ハブではない。棒切れとわかり跳び越える。織り仕事を終え、夕飯をかき込み、公民館に馳せ参じ踊りの稽古に邁進…。連日、その繰り返しだ。

人様の前で舞踊を発表するようになるとは…。舞台に上がる。考えるだけでへたり込みそうになる。生来身体表現は不得手だと、つよく固辞した。だが、島に暮らすなら当然とばかりに踊りの役が割り振られた。

八重山は「芸能の島」と呼ばれている。石垣、西表、竹富、小浜、波照間…、島々の神行事で奉納芸能が繰り広げられる。演じ手は島に暮らす普通の人びと。行事前は連夜にわたり練習となる。家庭も、仕事も、踊りもとしたたかに切り盛りする。賢明な島のおんなたちと出逢う。

幼い頃より伝統舞踊を見続け審美眼に磨きをかけたから。染織の師は踊りの指導も俄然熱くなる。そこにはよそ者だからという諦念のよぎる余地すらない。「小さいから前に来なさい」と言われ、数日後「あがやぁ、へたくそだから下がりなさい」となる。その繰り返しだ。遠慮なくしごかれ、ようよう手と足が揃う。

舞台発表の朝、髪を結い、白く厚く化粧を施され、公民館所蔵の浅黄色の衣装を着けた。引っ詰め髪でくたびれていた我が身の変貌に唖然とする。見回せば舞台袖の見知ったおんなたちは絵巻の麗人のよう。古色を帯びた華やぎで匂い立っていた。
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