第17回 女による女のための R-18文学賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2018年6月29日 / 新聞掲載日:2018年6月29日(第3245号)

第17回 女による女のための R-18文学賞 贈呈式

このエントリーをはてなブックマークに追加
左から友近氏、山本氏、夏樹氏、清水氏、辻村氏、三浦氏
第十七回女による女のためのR―18文学賞の贈呈式が、六月十八日、新宿の京王プラザホテルで行われた。大賞は清水裕貴「手さぐりの呼吸」(中津川てん改名、「森のかげからこんにちは」改題)、読者賞は夏樹玲奈「空におちる海」(礼夏改名、「You Can Use My Car」改題)、友近賞は山本渚「アップル・デイズ」に決まった。

選考委員の三浦しをん氏は選考経過について、「毎年のことですが、今年は殊に最終候補作が力作ぞろいで、辻村さんと熱く語り合いました。清水裕貴さんの「手さぐりの呼吸」と夏樹玲奈さんの「空におちる海」が、テイストは全く異なりますが、ともに素晴らしく、いろいろな読み方が出来る作品だったからだと思います。では大賞をどう選んだらいいかと考えたとき、清水さんが試みた、小説でしかできないたくらみのようなもの。登場人物たちの思いを一番深く読者の胸に届けるにはどうしたらいいかを、考えた末の人称視点の置き方や、文章の味わいが、胸に残りました。

ただ夏樹さんの作品も、小説でしか作り出せないものでした。登場人物たちがどういう関係で何のために旅をしているのかが、次第に明かされてくるスリルや煌めきのある、ロードムービーのような作品です。この作品が読者賞を受賞したことは、とても嬉しいです。

友近賞の「アップル・デイズ」も、喉越しがよいものだけを描いているわけではなく、しかも嫌な感じがしない、読者が登場人物を素直に応援できるような、魅力のある作品だと感じました。三作とも味わいは違いますが、少数派になってしまった人たちや、さみしさを抱えている人たちのことを、それぞれの視点からどのように表現するのがいいのか、作品のために考えながら書いていることが伝わってくる作品でした」

続いて同じく選考委員の辻村深月氏は、「一読して、清水さんの「手さぐりの呼吸」に胸を掴まれました。この小説は視点が単純ではない。「あなた」に視点を取っていますが、既存の作品を真似たのではなく、自分が描きたい世界をどう伝えようか、というところから行き着いたものだったのではないか。私は怪談や不思議な話が好きですが、一方ではそれがない世界としても読めるかどうかを重視します。清水さんの作品は、ひょっとしたらこれを語りたかったのは、作中の主要人物だったのではないか。その人が見た、「あなた視点」の一瞬の夢のような出来事だったのかもしれない、と。書かれていること以上に様々な思いを想像することができました。それはこの一篇に、圧倒的な奥行きがあるからだと思います。

読者賞の「空におちる海」は、冒頭から物語が動いています。最初のシーンからこれほど動いている作品は、応募作で読んだことがない。ラストは大きな変化は起こらないけれど、大きく進むことだけが価値あることではないと感じさせられるような、圧倒的な力強さがありました。

友近賞の「アップル・デイズ」は、小学生の女の子と彼女のお母さんの視点をとっています。大人にとっても環境が変わることは、小さなことではない、その中で見つけるラストシーン。ラストで、お母さんが夫と話す場面があります。男性に対する女性の闘いを言葉を尽して書き、静かな結論にリアリティのある力強さを感じました」と話した。

次に友近賞の贈呈が行われ、タレントの友近氏が挨拶した。「ドラマティックな展開というよりは、日常で家族や子どもが成長していくこと、人それぞれの生活が興味深いのだということを、この作品で改めて思いました。作者の山本さんが、真っ直ぐの目線と斜めの目線を両方持っているから、読者が揺さぶられるような感情が描かれて、こんなにのめり込めんで読めるのだろうと思います」

次に大賞を受賞した清水氏が挨拶に立った。「これまで親密な関係の人のことをあまり深く考えてこなかったのですが、ある日突然大切な人が亡くなってしまうことがあり、もう少し考えるべきである、と。いろいろしているうちに小説を書いた感じです。

学生のときに古本屋でバイトをしていて、あるときやってきた客が、なぜ小説を読まなければいけないのか、と言いました。私は、別に読まなくていいですよ、と思ったのですが、店長は読むべきだと。今その言葉が必要ではなくても、これから先の人生で、かつて読んだ本の言葉が必要になる瞬間がくるからと。そのときは、よく意味が分からなかったのですが、三十を超えたぐらいから、過去に読んだ本によって、人生に救われる瞬間が多々出て来ました。誰かの個人的で親密な問いかけが、活字として多くの人に広がるということは、ものすごくやさしくて愛のあることだと思いました。賞を頂いたからには誰かの人生の中でふと思い浮かぶような言葉を書けるようになりたいと思います」

読者賞の夏樹氏は「幼い頃、寝付けない夜に母が、自分の物語を語って聞かせてくれたことがありました。それがすごく面白くて、これは何かの形で皆に教えなければ、と作家を志したように思います。今後は自分にしか書けない小説を、心を燃やしながら書き続けていきたいと思っています」と話した。

友近賞の山本氏は「私は以前デビューをしていたのですが、小説家を夢見て夢破れた人として数年を過ごしていました。賞をいただき、うれしい反面、やっていけるのかという不安も湧き上ってきました。「小説新潮」に受賞作を掲載させていただくために、訂正のやりとりを編集者さんとして、久し振りに一つの小説を誰かと一緒に作り上げていく体験をし、幸福なことだなと。もしかしたら、小説の神様ともう一度ご縁がつながったと思っていいのかもしれないと思いました。感謝の気持ちを握りしめて、小説に誠実に取り組んでいこうと思います」と話した。
このエントリーをはてなブックマークに追加
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究 > 日本文学研究関連記事
日本文学研究の関連記事をもっと見る >