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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年7月3日 / 新聞掲載日:2018年6月29日(第3245号)

連 載 仏映画批評の歴史 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く62

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シネクラブで語るドゥーシェ(左)
HK 
 『カイエ』の中では、ヴィスコンティ以外に、フェリーニも軽視されていました。
JD 
 ロッセリーニがリアリズムに基づく一方で、フェリーニの映画とは想像の世界です。フェリーニの想像とは、夢の世界でもあります。同じように夢を取り上げている作家にミネリがいます。しかし、ミネリにおいて問題となるのは、夢を追い求める人々です。現実的な方法の中で夢をみせます。ミネリの映画において、人々は夢を作り上げようとします。最後には、夢が夢でなくなってしまう。現実の生活が姿を表し、映画はそこで終わりを告げます。フェリーニの夢とは、悪夢です。悪夢の中から、彼の想像が生まれます。人々は夢の世界の中を彷徨います。首尾一貫しない夢の世界そのものが問題となります。

ヴィスコンティはリアリズムの作家だと言ってもいいかもしれません。しかし、ロッセリーニの映画のあり方とは異なり、演劇の世界が「生」を生み出します。演劇の世界から映画の世界へと来て、演劇を映画へと応用しています。ヴィスコンティ映画の「生」とは、演劇のようにして、すでに作り上げたれたものとして存在しています。
HK 
 このヴィスコンティによる「生」とは、貴族的世界から作られたのではないでしょうか。
JD 
 ヴィスコンティの「生」とは、彼の生きていた世界から作られています。そうであるからこそ、多くの作品において舞台となる時代は、現在ではなく過去に属しています。多くは19世紀もしくは20世紀初頭を舞台としています。現在において作られた作品は僅かです。
HK 
 いずれにせよバザンは、映画批評の若い世代に大きな影響と機会を与えていますよね。
JD 
 バザンは他の批評家たちに非常に大きな影響を与えました。バザンが「映画とは何か」という問いを立てた時から、映画についてそれ以前のように話すことはできなくなっています。どうして自分が映画が好きではないか、映画が悪いものであるかのように話す思想家はいなくなってしまいました。バザンの提示した問いのおかげで、映画が二流の娯楽として扱われなくなったのです。
HK 
 今日でも非常に多くの人が、映画について話をしていますが、多くの点でバザンの影響が残っていると思います。今日に至るまで続く、シネクラブのような映画の文化はその時代に生まれていますよね。
JD 
 はい。シネクラブは戦後間もない時期に始められました。
HK 
 今でもシネクラブのようなものはありますが、あまり足を運ぼうとは思いません。
JD 
 大半はどうでもいいようなものです。
HK 
 非常に多くのシネクラブが、映画史や映画の筋を紹介することで満足している印象があります。
JD 
 人々が映画を理解するためには、他の芸術と同じようにして、多くの時間が必要です。映画とはエクリチュールの中で起こるものです。上手な映画の紹介を美術学校で学び良い成績を取ることは、誰にでもできることです。しかし、美術学校のようなことをするのは、美術学校の中だけです。
HK 
 ドゥーシェさんは、どのようにシネクラブを行なっているのですか。いかなる点で作品を分析するのでしょうか。全くと言っていいほど物語の筋などを話すことはないですよね。
JD 
 私が、映画の物語を話すようなことは、絶対にありません。ただ単に、エクリチュールが物語を生み出し、物語るのです。
HK 
 つまり、映画作家のエクリチュールを話すということですか。
JD 
 昔から今日まで、これから先も、私が語るのはエクリチュールです。そうであるからこそ、私は作品冒頭の画面から話を進めるのが好きなのです。
HK 
 作品の幕開けとなる映像は、僕も非常に好きです。もし一番最初の画面に間に合わなかったら次の上映を待つくらいに徹底しています(笑)。
JD 
 当然のことです。最初の画面というのは、非常に重要なものです。悪い映画作家の、最初の画面は、総じて出来が悪いものです。
HK 
 でも、今日の映画作家には冒頭の画面だけを作ることに長けた人もいます。カンヌのようなところに行けば、買付する人は最初の15分だけしか見ないではないですか。もしくは、Netflixあたりでザッピングする人の目を惹きつけることができるのかもしれません。
JD 
 市場原理に合わせて、そのような傾向が生まれているのかもしれません。
HK 
 詐欺のようなものですね(笑)。

<次号につづく>
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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