映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男 書評|山本 俊輔(DU BOOKS)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月12日 / 新聞掲載日:2016年2月26日(第3129号)

タフなベテランの軌跡をマニアな男ふたりが解き明かす 
村川が松田優作を語るのだから、たまらない

映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男
著 者:山本 俊輔、佐藤 洋笑
出版社:DU BOOKS
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日本人は長生きになった。元気なおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいる。本書の主人公・村川透も78歳にして現役、土曜ワイド劇場の2時間ドラマをコンスタントに演出し、舘ひろし×柴田恭兵の『さらば あぶない刑事』で18年ぶりに劇場用映画を手がけるという活躍ぶりだ。

そんなタフなベテランの軌跡を、70年代半ば生まれの男ふたりが解き明かす。あまり取材に応じることのなかった村川だが、じっくり培われた関係性をもとにグイグイと己を長回しで語り、スタッフ・キャストの証言がロングショットのように差し込まれる。一気に読み終わるのが惜しく、『はみだし刑事情熱系』の傑作「バスジャック! 恐怖の7時間・家族の絆」など学生時代に録画していた村川作品の再鑑賞を挟んでの長い読書だったが、実に楽しかった。

映画全盛期の日活に入社した村川は、1972年にしなやかなロマンポルノ『白い指の戯れ』で一本立ち。以降、「和製ハードボイルドを作った男」として、その手の映画やドラマを送り出す。代表作は、なんといっても松田優作と組んだ作品群だ。『大都会PARTⅡ』『最も危険な遊戯』『探偵物語』『蘇える金狼』『野獣死すべし』……70年代半ばから80年代初頭を駆け抜けたコンビは、やがて別々の道を選び、優作最後のドラマとなった『華麗なる追跡』で再会する。これまでほとんど沈黙を貫いてきた村川が優作を語るのだから、たまらない。

助監督時代の「大いなる助走」もたっぷり。鬼と呼ばれた巨匠・舛田利雄に就き、ハリウッド大作『トラ・トラ・トラ!』の現場まで仕切ったキャリアが、「俺の心は今でも助監督」という村川流の早撮り演出に結びつく。そこにあるのはひとりの仕事師としての覚悟と矜持。デビュー作で高い評価を受けながら挫折して故郷に戻った空白期間も、絶え間ない疾走のバネとなっている。

本書は映画監督・小説家の山本俊輔とライターの佐藤洋笑による共著であり、同じくDU BOOKSから刊行された『NTV火曜9時 アクションドラマの世界』に続くもの。関係者への徹底取材をもとにした前著の特集上映が名画座・ラピュタ阿佐ヶ谷で行われた際、評者は客席からふたりを見た。『狂った野獣』でバス乗っ取り犯を演じた片桐竜次による上映後トークの聞き手だったが、これがもう人相風体からして「あぁ、ほんとにハードボイルドが好きなんだなぁ」と思わせるコンビで、いかにもマニアらしい熱を放っていた。

もともと『ロック画報』の編集者であった佐藤は、同誌22号で「映画×ロック」という濃厚特集を企画し、ライターとして参加した河田拓也、膳場岳人と“闘う映画ZINE”こと『映画時代』を立ち上げる。そこに山本も合流。2011年の4号以来なかなか新刊が出ないと思っていたが、和製ハードボイルドに関する地道な活動は2冊の単行本へと拡張された。今回の書評を依頼される直前、評者は洋泉社で『映画秘宝EXにっぽんの刑事スーパーファイル』というムックの作業をしていたのだが、そこでも佐藤は大活躍。「俺に任せろ!」とばかり、70年代・80年代の刑事ドラマを引き受けていた。次のターゲットはなんだろう。いつまでも、タフに書き続けてほしい。
この記事の中でご紹介した本
映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男/DU BOOKS
映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男
著 者:山本 俊輔、佐藤 洋笑
出版社:DU BOOKS
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