『フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記』 暮しの手帖社より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年7月10日 / 新聞掲載日:2018年7月6日(第3246号)

『フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記』 暮しの手帖社より刊行

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フジコ・ヘミング著『フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記』が暮しの手帖社から刊行された。A5変・160頁・本体2315円。

フジコ・ヘミングといえば60歳代でデビューし、その、心を揺さぶる演奏で有名になった世界的なピアニストである。いま86歳になる。終戦の翌年1946年フジコは14歳、私立の高等女学校に通いつつピアノに打ち込んでいた。その夏休みのあいだ彼女は絵筆をとって絵日記を書き続けていた。宿題でもないのに、日本の教育になじめなかったフジコの、精一杯の自己表現だったのだろう。7月6日から9月10日までの短い記録である。食べ物のことがよく書かれている。弟のことも、親戚のお兄さんたちとのこと、レッスンでの失敗のこともあからさまに書かれていて、終戦直後の東京の様子が一人の少女の日常からうかがわれ、あっという間に読み終わる日記である。この少女が「水虫」に悩まされていたのも、いまでは考えられない栄養失調の時代の象徴なのだろうか。描かれている服装はさながらデザインブックのような感じすらあり、終戦直後の悲惨さは感じられない。生きる力のみなぎる少女らしい絵を見ているだけでも楽しく元気付けられるのである。母親のことももちろん毎日のように書かれているが、必死で育ててくれる母親像と、厳しくピアノに向かわせる音楽家としての母親像とが、日記の裏側に見ることができ、また、この日記を刊行するにあたって書いたフジコの言葉から、母親への気持ちも読み取れるのである。天才バイオリニスト五嶋みどりと母親の節の関係を見るような気がしてしまうのは筆者の思い過ごしであろうか。

この絵日記は、公開中の映画「フジコ・ヘミングの時間」にも登場する。

暮しの手帖社TEL:03・5338・6011
この記事の中でご紹介した本
フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記/暮しの手帖社
フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記
著 者:フジコ・ヘミング
出版社:暮しの手帖社
以下のオンライン書店でご購入できます
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