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八重山暮らし
更新日:2018年7月10日 / 新聞掲載日:2018年7月6日(第3246号)

八重山暮らし(48)

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武者によるツナヌミンの演舞。この後、東西に別れての大綱引きが始まる。石垣島四カ字の豊年祭。 (撮影=大森一也)
島の豊年祭


日本で一番早い田植えの行われる八重山は、実りを祝う祭りの訪れもひときわ早い。豊年祭は島々、いや村々によっても、その装いを異にする。大綱引きあり、舟漕ぎあり、壮麗な行列あり…。なかには記録撮影が一切禁止という極めて厳粛な地域もある。八重山の祭〓は一括りにできない。そのただ事ではない多様性に島ならではの豊かさをみる。

ねっとりとした夏の夜気が立ち込めてきた。二日をかけた豊年祭は山場を迎えている。昼間の灼熱が道にへばりつき、そこに人びとが群れているのだから皆、総身汗みずくだ。松明に照らされた武者姿のふたりを見つめる。武者が立つ板舞台を支える太い二の腕が炎でぬらぬらと妖しく光る。昂奮した気息が沸々たぎり、舞台へと凝縮されていく。
「やぁーーー」

武者の若者と共に咆哮を揚げたのは、隣でコップの泡盛をあおる年かさの男だった。
「わしも昔、あの鎌を使ったさぁ」

男にしがみつく孫とおぼしい少年が、小さな拳を突き上げる。

肩をいからせ男は「わしも…」と声を震わす。

流星の如く振り下ろされた長刀を両手の鎌で受けとめる武者。農民と士族のたたかいを意味するといわれる演舞だ。息を詰め、しばし見合い、突然激しくぶつかり合う。計算し尽くされた動と静の演出。射すくめられたように凝視する。いよいよ熱くなる島人たちに埋もれながら…。

(やすもと・ちか=文筆業)
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