原発を止める島 祝島をめぐる人びと 書評|堀内 和恵(南方新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月15日 / 新聞掲載日:2016年3月4日(第3130号)

原発を止める島 祝島をめぐる人びと 書評
脈々と流れる命の哲学 
祝島の方向はまさに日本の未来の鍵

原発を止める島 祝島をめぐる人びと
著 者:堀内 和恵
出版社:南方新社
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瀬戸内海に浮かぶ人口450人の離島、山口県東部上関町の沖合四キロにある祝島をめぐる人びとの姿と素顔を率直に伝えるルポルタージュである。著者堀内和恵氏は現役時代に沖縄、原発、冤罪などをとりあげユニークな授業を行う中学の教師であった。2014年夏、著者は祝島に初めて向かった。そこで見たのは光と影、この国の美しさと醜さ、人々の明るさと長期にわたる不屈のたたかいであった。

上関町は人口6千5百人余、町は瀬戸の美しい景観に恵まれ、古代から海上交通の要所であった。特に祝島は九州と結びつきが強く今も「神舞」という伝統往来行事が行われている。1981年暮れ、対岸4キロの田ノ浦に中国電力による上関原発立地計画が表面化する。以来33年、強権と権力側による恫喝や締め付け、利権の渦、補助金や保証金のばらまきのなかで、それに耐え何故たたかい続けられるのか。

反対運動を支える女性と「おばちゃん」たち。毎週月曜日に行われるデモの主体だ。三代にわたる棚田をつくる老農夫、鯛の一本釣りや海藻をとる漁師、Uターンして島おこしに取り組む若者たち、そして寡黙だが笑顔を絶やさない多くの人びと。それらの言葉には暮らしを育んでくれた海への誇りと感謝があった。親戚や仲間を敵と味方に引き裂き故郷を破壊した原発計画強行への怒りがあった。命かけても海を守る祝島の人々びと――推進、反対の枠組みをこえて、語り合う道は、開かれないものだろうか。この著者の思いに島の女性の声が重なる。「原発、早く止めたいんです。父母ももう92歳と89歳、生きているうちに前のようにみんなが仲良くなって…」。東京に帰って著者は自分がひとにやさしくなっていることに気づく。この情景は祝島のすべてを語るようで美しい。フクシマのあともなお原子力神話にしがみつく国と大資本。真の生活者の感性から生まれた、脈々と流れる命の哲学こそ未来をも指し示す光であった。

著者はこの島をめぐる三人の女性を訪ね、信頼と共感を込めて記している。祝島のかかわりはそれぞれに運命的であるが今は作品だけを示そう。

映画監督、纐纈あや。映画「祝りの島」。

映画監督、鎌仲ひとみ。映画「ミツバチの羽音と地球の回転」。

そして写真家、那須圭子。写真絵本「天空の棚田」。
私はこれら二つの映画と写真集は必見の価値があると思う。本著の伝える言葉が映像とともに一層輝くだろう。

本著第二部は原発立地計画を事前に撤回させた全国29例を調査確認した貴重な報告と解説である。この事実を知る人は少ない。
「海はだれのものか。漁師だけの海じゃない。みんなの海じゃけえ」。持続可能な社会を目指す祝島の方向はまさに日本の未来の鍵である。

著者は「祝島から、優しい風が吹いている」と二度繰り返す。優しい風とは?ほんとうの私たちの暮らしをつくる未来からの希望の風といえようか。著者のこころの祈りに近い。
この記事の中でご紹介した本
原発を止める島 祝島をめぐる人びと/南方新社
原発を止める島 祝島をめぐる人びと
著 者:堀内 和恵
出版社:南方新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「原発を止める島 祝島をめぐる人びと」出版社のホームページはこちら
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