対談=森 達也×初沢亜利 隣人、北朝鮮と日本の未来 初沢亜利写真集『隣人、それから。』(徳間書店)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年7月13日 / 新聞掲載日:2018年7月13日(第3247号)

対談=森 達也×初沢亜利
隣人、北朝鮮と日本の未来
初沢亜利写真集『隣人、それから。』(徳間書店)刊行を機に

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第6回
今の日本人に欠けているのは想像力

森 
 初沢さんは巻末の「滞在記」で写真を撮ることの加害性についても書いています。つまり自分が撮ることによって誰かを傷つけるかもしれない。これは大事なことです。僕も撮る時には常に考えています。だからと言って遠慮はできないし、同時に後ろめたさみたいな意識がある。ましてやそれが北朝鮮という特異なエリアに入った時にはより一層強まると思います。いろんな人が被写体になっているけれど、もしかしたら傷つけているかもしれないと常に考えながら撮っていますか。
初沢 
 そうですね。彼らが僕の写真に写ってもいいですよ、と一言も言ってはいません。北朝鮮に限らないですが、東京に住んでいて東北の被災地や沖縄や北朝鮮に行くだけで、構造的にはこちらが加害者側になります。さらにカメラを持って写真という形で収奪するわけですから加害性が二重になる。被写体だけではなく、撮影を手助けしてくれる方々にも迷惑が及んではいけない。そのことについては強く意識しています。
森 
 南北分断の原因を作った日本は、そもそも北朝鮮に対しては加害者で始まっている。それを日本全体が忘れている。撮られたことで彼らが幸せになるわけはないし、もしかしたら予期せぬ迷惑をかけているかもしれない。だけど、「すみません」と思いながら撮るということですね。それにしても表紙の写真は不思議だな。
初沢 
 もともと手を繋いでいました。朝鮮半島では同性同士でも手を繋ぐ習慣があるようです。
森 
 アラブもそうですね。でもレンズを向けたら違う反応をすると思うけれど。
初沢 
 この一秒後には手を離していました。右の人が、撮られているぞ、と知らせているんです。
森 
 撮られてから何も言われなかった?
初沢 
 大丈夫でしたね。
森 
 不思議です。しかも兵士なのに。
初沢 
 カメラを持って僕がどのように存在しているかが、写真の一点一点をどうすくい取っていけるかとすごく大きく関わっていますね。案内人の目もあるし、被写体の目もあるし、被写体の傍にいる人民の目もある。なぜ日本人に写真を撮らせているんだという眼差しで案内人や僕のことを見てくるんです。そこの空間にいる様々な人たちがどのように、どでかいカメラを持つ僕のことを見ているのかに対しては最大限の注意を払います。パッと撮って、パッとカメラを下ろして、ニコッと笑って次の場所へ行くみたいな(笑)。執拗に撮ったりはしません。パッと撮って済むのが写真ですよね。だから北朝鮮を伝える手段として写真はとても良い表現メディアだと改めて思いました。北朝鮮のドキュメンタリー映画もありますが、いずれにせよ動画で北朝鮮を撮ることはかなり難しいと思います。
森 
 僕もビデオカメラを持って行ったけれど、早々と止めました。写真は動画に比べれば情報量が圧倒的に少ない。例えば二四〇分の一秒という瞬間です。だからこそ見る人の想像力を〓き立てる。表紙の写真も、彼らがこの後にどうしたのか、この前はどうだったのかと想像できる。そう考えさせる機能を持っているメディアが写真だと思います。今の日本人が北朝鮮に対して一番欠けているのは想像力です。ならば北朝鮮を伝えるうえで、写真が一番優れたメディアということになる。今後も北朝鮮に行く予定は?
初沢 
 僕は通いたいけれど、一回一回が交渉ですから入れてくれるかはわかりません。メディアに露出して色々と発言していると、意に反した扱いになることもあります。そういう一つ一つが入国許可を左右するんです。

ただ入り続けたいとは思いますね。二冊目に収録した写真を撮りながら、これからの北朝鮮をより一層見たくなってきました。 (おわり)
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この記事の中でご紹介した本
隣人、それから。  38度線の北/徳間書店
隣人、それから。 38度線の北
著 者:初沢 亜利
出版社:徳間書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「隣人、それから。 38度線の北」出版社のホームページはこちら
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