教養としての経済思想 書評|北田 了介(萌書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月14日 / 新聞掲載日:2018年7月13日(第3247号)

教養としての経済思想 書評
人物に学ぶ経済思想史 
コラムで現代の経済事象との関連性を解説

教養としての経済思想
著 者:北田 了介
出版社:萌書房
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経済思想史を彩るキーマンについては様々な局面で学習する機会はあるが、彼らの関係性を読み解くことはなかなか難しい。だがひとたび理解できると、それぞれの時代の特徴がつかめて興味深い。本書はそうした思想家たちをわかりやすく解説した教科書である。

本書で取り扱うのは、古典派以前から古典派、マルクスにいたるまでの面々である。具体的には、ロック、ケネー、ヒュームとステュアート、スミス、マルサス、リカード、J・S・ミル、マルクスである。それぞれの生い立ちから学問の究め方まで丁寧に記述する。それぞれが交わった他の研究者との関係を通じて、経済学の流れを丁寧に解説する。重層的に影響を及ぼしながら、理論を深めていく様子が把握できる。

本書は英国のピューリタン革命、名誉革命から書き起こしているが、当時、既に利子率の決まり方などを議論していることが読み取れる。最近の世界的な超低金利政策や為替の切り下げ競争などを暗示しているかのようでもある。

ケネーは「フィジオクラシー」という重農主義の立場をとった。自然が本来持つ法則に基づいて経済政策も実行されるべきだという考え方だ。それが有名な「経済表」へと結びつく。ケネーについてはアダム・スミスやシュンペーターによる評価も添えられ、相互に意識しながら理論を構築した過程を追うことができる。

本書の中盤で記述が充実して紙幅を割いているのがアダム・スミスである。古典派経済学の中心となっているスミスの代表作である「国富論」を全体的な見取り図を使って解説している点に特徴がある。国富論は一般的には「見えざる手」という表現が有名だが、本書は分業や価格、資本蓄積などについて詳述した後に、経済発展の流れ、政府の役割などについて思考の展開を紹介することで、スミスの発想を再現する構成となっている。

このほか、「人口論」で知られるマルサスは、別の論文で示した「食料高価論」の中で穀物価格が最終的に需要量と供給量の一致するところで価格が決定されるという考えを示しているが、これが20世紀に近代経済学を確立したケインズの「有効需要理論」に影響したとする指摘はうなずける。

さらに最後のマルクスに関する記述も詳しい。18~19世紀のドイツの哲学者ヘーゲルの「市民社会の矛盾は、最終的に国家が登場することで解決される」という主張を批判。資本主義社会を分析することで、働き方を変革させるための「社会主義革命」を構想する道筋が詳述されている。労働力を商品とみなし、「剰余価値」の形成を理論化する過程である。

本書がわかりやすいのは、経済思想に対するアプローチをそれぞれの人物の生い立ちから説き起こし、時代背景とともに説明しているゆえである。随所に配置されたコラムは、現代の経済事象などとの関連性を詳しく解説し、連綿と続く経済学の歴史が今につながっていることを意識させる仕掛けである。人物に学ぶ経済思想史の良きテキストである。
この記事の中でご紹介した本
教養としての経済思想/萌書房
教養としての経済思想
著 者:北田 了介
出版社:萌書房
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