ドキュメント 緊迫する〈東大紛争〉 渦中から再び問題点を探る|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年7月19日

ドキュメント
緊迫する〈東大紛争〉
渦中から再び問題点を探る

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第4回
事態収拾への期待 その陰に用意された策略
4 大学問題を政府・財界

学生の抗議にあって教育、教養二学部が学部長選出にふみきれずにいるあいだに「新執行部」八学部長は加藤一郎法学部長を総長事務取扱に選んだ。大河内辞任が5日の閣議で決まるからには、前日には事務取扱を内定しておかねばならない、という官制の必要からであった。こうして東大の規制にない「総長事務取扱」の肩書を得た加藤教授は、5日文部大臣室を訪れた。難尾文相は手ずから事例を手渡しながら、事態収拾への熱意を激励した。「新執行部」が公示した全学集会開催の方針さえ、文相は批判をひかえたという(11日『毎日』)。
なによりも事態収拾を、とおい期待の陰には、からめ手からの策略が用意されていた。6.7日に文部省が招集した国立大学学部長会議は、学生の意見や希望を聞くことは必要だが、予算、人事にかかわる学生参加をゆるすべきではない、との方針を確認した。さらに「学外での過激な行動にたいし、大学は社会的責任をもて」という宮地大学学術長らの発言に、依然たる学生監視の任務があきらかにされていた。
東大文学部事件は官憲をいらだたせずにおかなかった。8日の閣議後の記者会見を難尾文相はこの問題に集中し、「人権尊重、生命尊重がひとかけらもない」と学生を非難した。いっそう明確に権力の介入を予告したには秦野警視総監談話(11日『毎日』)であった。総監談話は、大学告示に「不法拘禁」の文字があることを取り上げて、警察出動の根拠はすでに成立したとのべ、大学が機動隊要請のまえになにをなしうるかを直視するのみだ、と威圧的に語っていた。
11日文相は進んで大学閉鎖特別立法の可能性を示唆した。教育機能の停止、学生の休学扱い、などを内容とする立法を「大学問題だけの臨時国会を召集」して成立させるという報道(12日『読売』)は、日教組が下旬の中央委員会に用意している闘争条件のなかで暴露した「大学機能停止措置法」構想(8日『朝日』)と照応するものであった。学校教育法に規定する文相の私学閉鎖権を国公立大学に拡大しようという声は、この前後にとくにかたまってきた。
財界では、日大紛争、10.21事件に絡んで採用内定者の取り消し運動がすすむなかで、経済同友会問題委員会が15日、大学制度に関する中間報告を発表した。「卒業生の7割を雇用する経済界」に大学の関心を訴えたこの報告は「大学院大学、総合大学、技術者養成大学、教養大学」の格つけを提唱し、かつての天野構想を再現している。日本経営者団体連盟の桜田武代表常務理事は、18日の日経連首脳会議のあとで、東大封鎖論を新聞記者にぶちまけた。財界のいらだちは極点に達しようとしている。
自民党文教委員会が15日の報告で、大学学長のもとに、管理、教育、学制対策の三副学長をおく、というリーダーシップ強化の構想をあきらかにしたのに続いて、文部省は18日、中央教育審議会に大学問題に関する緊急諮問を行った。「中枢管理機能」の強化と並んで、「学園紛争終結のための特別措置」が検討項目に登場したことは、大学閉鎖特別立法がようやく公然たる立法段階に入ったことを意味する。権力がわもまた「東大紛争」に焦眉の課題とするにいたった。内部ゲバルトの危機を不断にはらみながら、大学「自治」ぼ内実をさだめる作業は一瞬のゆるみも許されない段階に達した。(おわり)

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