白井聡×鴻上尚史 特別対談 載録 二度目の敗戦をどう生きるのか? 「特攻兵」と「国体」の視点から|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年7月20日 / 新聞掲載日:2018年7月20日(第3248号)

白井聡×鴻上尚史 特別対談 載録
二度目の敗戦をどう生きるのか?
「特攻兵」と「国体」の視点から

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六月二十六日、早稲田大学で、政治学者の白井聡氏と作家・演出家の鴻上尚史氏による特別対談が、〈「二度目の敗戦」をどう生きるのか?「特攻兵」と「国体」の視点から〉と題して行われた。昨年末刊行された鴻上氏の『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)は現在十八万部、今春刊行の白井氏の『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)は早くも七万部を超えるベストセラーとなっている。戦前の日本の状況と比べながら、現在私たちが置かれている状況、そしてこの閉塞した時代に何が私たちを生き延びさせるかを、熱く明快に語り合った、その対談の一部を載録する。 (編集部)
第1回
■「特攻」と「国体」、あの敗戦はなんだったのか

白井 聡氏
白井 
 「国体」も「特攻」も大時代的な言葉ですが、今日の講演タイトルを〈「二度目の敗戦」をどう生きるのか?〉としたのは、この国が今、一九四五年の敗戦に匹敵するひどい状況にあるからです。
鴻上 
 はじめに、それぞれの著書を紹介してから、日本の現状について、話していきましょうか。

僕の『不死身の特攻兵』は、直截にいうと、九回特攻に出て九回帰ってきた佐々木友次さんという方についての本です。佐々木さんのいた陸軍では、特攻作戦に軽爆撃機を選び、なおかつ八〇〇キロ爆弾を落せないよう機体に縛り付けて、「爆弾を落すな、体当たりしろ」と。第一回の特攻隊に選ばれたこの二一歳の若者は、出撃して帰ってくるたびに、四~五〇代の参謀から何で突撃しないのか、次こそどんな船でもいいから体当りしろ、と怒鳴られ、それでも生き延びたんです。佐々木さんを中心に、特攻とはなんだったのか、その実像に迫りたいと思いました。佐々木さんは二〇一六年二月に、九二歳で亡くなるのですが、その三ヶ月前に初めてお会いして、計五回お話を聞くことができました。

特攻を調べていくと、志願だったのか命令だったのか、という争点にぶつかります。特攻を命じた側は、兵士たちの志願によるものだったと言いますが、一方特攻で死なずに帰った人たちは戦後、あれは命令だったと言うのです。それを受けて、「兵士たちとの意見の乖離があったようだ」とコメントする元司令官もいました。この構図は、先日の日大アメフト部の事件に重なります。七〇年以上経っても、この国は何も変わっていないんです。
白井 
 暗い気持ちになりますね。先の大戦では、日本国民の犠牲者だけで三〇〇万人を超えますが、この大きな犠牲から、現在の私たちの国や社会は、一体どんな教訓を受け取り、そこから何らかの克服ができたのか。そのことがいま突きつけられています。

今年は、明治維新から一五〇年ですが、私は「国体」から日本の近現代史を考えることができると思っています。戦前、国体という概念は、日本社会で強い力を持っていました。が、戦後には一転して死語になります。それは、戦前の国体観念が、天皇制ファシズムの温床になったと見做されたからです。民主化改革により、新憲法に基づき、国体的側面が払拭された象徴天皇制へと移行することになりました。が、本当に国体が死んだのかと言えば、変化を遂げて生き延びた。いまもなお、社会のど真ん中に存在している。その変化がサブタイトルに示したように「菊と星条旗」であると。

戦前の国体は、その頂点に天皇が鎮座していました。私が本書で強調したのは、日本国は一つの大きな家族であるという、戦前の国家観、「家族国家論」です。天皇はこの国に、大いなる家長として君臨していました。「天皇陛下の赤子」という言葉は、神である天皇が、臣民つまり国民を、我が子のように愛してくれている。それは光栄な、幸福なことであり、何か事が起これば、天皇のために命を投げ出すのは国民の義務である。これが全国民に強制された理念だったわけです。

そして戦後は、ファナティックな天皇崇拝は失われ、対米従属がとって代わります。天皇陛下が国民を我が子のように愛してくれている、というのが戦前の物語。これが戦後、アメリカは日本を愛してくれているという物語にすり替わります。戦前日本の近代化の限界は天皇制にあり、敗戦後それを変革し民主化を進めることになったのですが、結局今も、星条旗を頂点とする国体が、日本の社会を根底から腐らせていると私は見ています。
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この記事の中でご紹介した本
国体論 菊と星条旗/集英社
国体論 菊と星条旗
著 者:白井 聡
出版社:集英社
以下のオンライン書店でご購入できます
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか/講談社
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか
著 者:鴻上 尚史
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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