ロミイの代辯 寺山修司単行本未収録作品集 書評|寺山 修司(幻戯書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月21日 / 新聞掲載日:2018年7月20日(第3248号)

ロミイの代辯 寺山修司単行本未収録作品集 書評
テラヤマ・テイストとテラヤマ節に染め上げられた読み応えのある短文 
十分に読書の愉悦を感じられる内容

ロミイの代辯 寺山修司単行本未収録作品集
著 者:寺山 修司
編集者:堀江 秀史
出版社:幻戯書房
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いまだ多くの熱心な読者に恵まれている寺山修司という文学者について、あらためてここで詳述するには及ばないだろう。周知のごとく、将来の大いに期待された歌人として出発し、詩、エッセー、評論、演劇・ドラマの脚本、映画監督と、その仕事を矢継ぎ早に拡張していった寺山は、自らを育んだ東北の風土に根ざす気質を全開にして、当時すでに忘却されつつあった前近代性という異形を蘇生させ、都会の日常に飼い慣らされた人々に強力な魅毒を散布したのであった。

本書は、寺山の踏破した広大な文化的地平において、単行本に収録されることなく一般読者の目には留まりにくかった貴重な文章を集成した意欲的な試みである。比較的軽いエッセー風の連作から、短歌、詩、やや難解な評論、紀行文のたぐいにいたるまで、すべてテラヤマ・テイストとテラヤマ節に染め上げられた読み応えのある短文が、場合によっては初出の挿絵と写真を交えながら収められている。もちろん「意欲的」というからには今後の寺山研究の重要な資料となるように編集されてもいるわけであるが、かならずしも研究者でない読者が読んでも十分に読書の愉悦を感じられる内容となっている。その愉悦は、あるいは二重であるともいえようか。

まず第一に、あえていうまでもなく、雑誌掲載の段階で埋もれていた数多の作品群を蒐集の労を要せずにまとめて読み通せるという愉悦がある。寺山のようにその作品ジャンルが多岐にわたり、本人いわく「ゲリラ戦術」をとって発表媒体も相当に幅広い著者のケースでは、漏れなく探すということ自体、大変な労力が要求されるはずである。

第二に、編者により詳細かつ慎重に記された解題と、解説・付録として収録された研究成果の一部とおぼしき論考を本文と併せ読むことによって得られる読書の愉悦がある。「単行本未収録作品集」という性格上、どうしても各々が孤立した印象になりがちな各文の間の空白をそれらの解題・論考が可能なかぎり埋めてくれるので、読者はときにいくつかの文章の間に隠れている有機的な関連を見出し、またときには寺山作品のコアにまでアプローチすることもできるだろう。

一例を挙げるなら、寺山のデビュー当時に問題視されたいわゆる短歌の「模倣・盗作事件」に関して編者は丁寧に事実関係を整理し、従来の定説とは異なる見解を提示して、著者本人の記した短い模倣・盗作論を寺山文学の本質に関わる深い地層にまで掘り下げて考察する。編者によるこの親切な解題に導かれて寺山の論を併せ読むとき、たとえばある読者はただ寺山の模倣・盗作論を味読するにとどまらず、同時代に人気を博した澁澤龍彦の「模倣・剽窃問題」に思いを巡らせて、「完全なる独創という不幸な夢」(寺山)「独創的たらんとする近代の通弊」(澁澤)からいかに脱却するかという共通の問題を二人の巨人のケースに即して比較検討する探求の旅に赴くこともできるかもしれない。

掲載された編者の論考は寺山の表現におけるクロスジャンルとダイアローグの理念の問題、六十年代の寺山人脈、プロヴォーク(森山大道、中平卓馬)の写真論との関連についてであるが、いずれもが何よりも本文を読む際にその内容を深く理解できるよう配慮されている。むろん入門に適してるとはいいがたいが、多岐にわたる寺山の仕事のどこかに惹かれてきた読者にとっては魅力的な大冊である。
この記事の中でご紹介した本
 ロミイの代辯  寺山修司単行本未収録作品集/幻戯書房
ロミイの代辯 寺山修司単行本未収録作品集
著 者:寺山 修司
編集者:堀江 秀史
出版社:幻戯書房
以下のオンライン書店でご購入できます
「 ロミイの代辯 寺山修司単行本未収録作品集」出版社のホームページはこちら
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