日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態 書評|舘野 和己(吉川弘文館)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年7月29日 / 新聞掲載日:2016年5月6日(第3138号)

日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態 書評
多様な古代史像を描く 
新しい取り組みの貴重な成果

日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態
著 者:舘野 和己、出田 和久
出版社:吉川弘文館
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日本古代史にかかわらず歴史研究の成果については、時代と分野を区分して公刊されるというのが今までのあり方だったと思う。

しかし、このような従来どおりの編集方針ではなく、今までにない斬新な視点による成果の公刊が工夫されてきている。本書も「交通」「交流」「情報」というコンセプトに立脚して、日本古代史の実態を解明しようとする新しい取り組みの成果の第一巻で、「制度と実態」を視座として、「古代交通に関わる制度と、その下で展開した交通の実態を、中国・朝鮮諸国も視野に入れながら取り上げ、主に国家が要因の主体となった交通をも見」ようとしたものである。続刊として「旅と交易」との視座での第二巻、「遺跡と技術」の第三巻の刊行が予定されている。

まず、その目次一覧を掲げてみる。

Ⅰ、『中央と地方を結ぶ交通』(1)「律令制下の交通制度」(市 大樹)、(2)「関と交通検察」(舘野和己)、(3)「税の貢進」(今津勝紀)、(4)「中央と地方を結ぶ人々の動き」(馬場 基)、(5)「文書の作成と伝達」(山下信一郎)。

Ⅱ、『地域に展開する交通』(6)「国府・郡家をめぐる交通」(鈴木景二)、(7)「瀬戸内の海上交通」(森 哲也)、(8)「海と河をつなぐ交通」(堀 健彦)、(9)「古代東北の軍事と交通」(永田英明)、(10)「九州地方の軍事交通」(酒井芳司)。

Ⅲ、『東アジアの交通』
(11)「中国律令制下の交通制度と道路」(荒川正晴)、(12)「朝鮮三国の交通制度と道路」(田中俊明)。これにⅠ章には「隠岐に残る駅鈴」(森田喜久男)、Ⅱ章に「封緘木簡が語ること」(高島英之)、Ⅲ章の「沖ノ島に残る祭祀遺跡」(酒井芳司)のコラムが付載されている。

それでは、各論の概要を紹介してゆくことにするが、紙幅のことからすべてに触れることができないことをまずお断りしておきたい。

(1)は、文献史料だけでなく、木簡をも駆使しながら交通・道をとおして古代国家の地方支配の実態に迫ったもの。唐の十道制にならって成立した我が国の七道制の特質や七道制の統治原理が応用されて国内・郡内のブロック化がすすみ地方統治が行われたとする。また木簡研究の成果を生かして七道制の枠組みを超えての交通実態のあったことを指摘し、令制からみた駅馬・伝馬の配備や飼育、駅制・伝制の使用や最上川水運を利用した出羽国での水駅についても関説している。

(2)は、律令制の統治として、本貫地から逃亡して税の徴収から免れる浮浪と逃亡の抑止に注視して、その対策である五保と里による相互監視の制度や刑罰について考察する。さらに伊勢鈴鹿・美濃不破・越前愛発の「三関」の運営、関の通過許可証である「過所」やその発給について「軍防令」「関市令」の規定から考究する。そして平城宮跡出土の過所木簡を吟味して、国司でなく里長が発給し、日付・異動理由・関名もないなど規定の書式と異なる現状を記すが、これが律令制社会の実態であったと理解すべきことを開陳する。

(4)は、律令国家の成立によって飛躍的に増加した都鄙の人の往来に属目して、その都鄙交通がもたらした社会的・歴史的影響について論究する。まず国司とそれにともなう家族というまわりを含めての移動が結果的には壮大な都鄙交通を惹起したこと、その結節点として国府があったこと、これ以外にも郡司や帳内・資人、衛士、仕丁、運脚夫や流人などの都鄙往来があり、これら人々の往来が都の政治・文化などを全国に広め国内の均一化の原動力となり、文化を底上げして、次代の地方社会の躍動へと繋がったと結論する。

(5)は、中央と地方間の文書の書式について正倉院文書の実例をあげつつ検討する。次いで律令制度下の押印制度の確立と伝達の手段と方法を概観し、加えてその実態を「出雲国計会帳」「但馬国正税帳」などを素材として検証し、中央と地方間の文書は、中央からの「符」、地方からの「解」、諸国間の「移」の書式が基本であり、伝達手段としては中央からは逓送方式で、地方からは国郡司らの専使によるものであったことなどを解明する。

最後に、本書はこのように「交通・交流・情報」をコンセプトにしたことで多様な古代史像を描くことに成功しており、貴重な成果であると評価できる。「旅と交易」、「遺跡と技術」を視座とする続刊にも期待するところ多大である。
この記事の中でご紹介した本
日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態/吉川弘文館
日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態
著 者:舘野 和己、出田 和久
出版社:吉川弘文館
以下のオンライン書店でご購入できます
「日本古代の交通・交流・情報 1 制度と実態」出版社のホームページはこちら
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