へんてこな春画 書評| 石上 阿希(青幻舎)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年7月29日 / 新聞掲載日:2016年5月6日(第3138号)

へんてこな春画 書評
「お笑い系春画」のたまて箱 
なんでもシモに結び付けて笑っちまえ

へんてこな春画
著 者: 石上 阿希
出版社:青幻舎
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へんてこな春画( 石上 阿希)青幻舎
へんてこな春画
石上 阿希
青幻舎
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2013年から2014年にかけて大英博物館で開催された「春画 日本美術の性とたのしみ」展が9万人を動員。また昨年9月から12月にかけて、東京・永青文庫で日本初の「春画展」が開催され、85日間になんと20万人を動員。今、「春画」がかつてないほどの注目を集めているわ。

そんな中、今年2月に刊行されたのが、『へんてこな春画』(青幻舎)。著者の石上阿希さんは春画の研究家で、大英博物館春画展のプロジェクトキュレイターも務めた人。つまり昨今の春画ブームの火付け役の一人というわけ!

アタシたちドラァグクイーンにキレイ系とお笑い系がいるように、春画や艶本にも、ガチなエロ系からお笑い系までいろいろあるんだけど、『へんてこな春画』で扱っているのはお笑い系ばかり。そしてお笑い系春画には、パロディものが多いの。神様の顔が性器の形に描きかえられていたり(罰あたりね)、「東海道五十三次」がエロ絵画に描きかえられていたり、ありとあらゆるものが、エロ方向にパロディ化されているのよね。この本では、そんなパロディ春画たちを「自然科学・教養」「はやりもの」「古典・伝統」などのテーマに沿って、元ネタと一緒に紹介し、楽しみ方や見どころ、表現技法などを解説しているわ。また、冒頭には春画・艶本の形式や画面構成、流通経路などを簡潔に説明した「春画の基礎知識」が、巻末には春画・艶本の絵師・作者の略伝が掲載されていて、アタシみたいな「春画初心者」にも楽しめるつくりになっているの。著者と編集者・評論家の山田五郎さんとの対談も、春画を切り口に「江戸の粋」や「『芸術か猥褻か』論争」などについて語られていて、かなり読みごたえあり!

それにしても、「春画」という表現の幅の広さ、春画を育んだ江戸文化の豊かさには、あらためてびっくりするわ。なによりユニークなのは、菱川師宣や喜多川歌麿など、「表」の世界で活躍していた作家たちも春画を手がけ、時には自分たちの作品をパロディ化していた点。今も、人気漫画や芸能人を題材にした二次創作は盛んだし、同人出身の作家さんが「表」の世界で活躍するようになるケースもあるけど、「表」の人気漫画の作者が、自分の作品をネタに二次創作を行った――なんて聞いたことがないわよね。

もちろん、この一点だけをとりあげて「江戸時代は開放的で進んでいた」とか言うつもりはないけど、お笑い系春画に見られる「『表』も『裏』も関係ねえ」「なんでもシモに結び付けて笑っちまえ」という姿勢はとても素敵。現代の作家や読者たちにも、このくらいの大らかさがあれば、もう少し自由で伸び伸びした社会になるかも……と思ったり思わなかったり。

そんなわけで、「春画の魅力」が非常によくわかる『へんてこな春画』。アタシ的には、男色もの春画が一点しか掲載されていないのがちょっぴり物足りないけど……まあ、仕方ないか。とにかく、春画に興味がある人にもない人にも、おすすめの一冊だよ!
この記事の中でご紹介した本
へんてこな春画/青幻舎
へんてこな春画
著 者: 石上 阿希
出版社:青幻舎
以下のオンライン書店でご購入できます
「へんてこな春画」出版社のホームページはこちら
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