シリーズ・メディアの未来8 メディア・コンテンツ論 書評|岡本 健(ナカニシヤ出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年10月14日 / 新聞掲載日:2016年10月14日(第3160号)

シリーズ・メディアの未来8 メディア・コンテンツ論 書評
コンテンツ研究の可能性と課題 多様な視点から魅力的な事例を分析

シリーズ・メディアの未来8 メディア・コンテンツ論
出版社:ナカニシヤ出版
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多くの人にとって「コンテンツ」とは、なんとなくイメージが湧くが、あえて問い直すことのない存在かもしれない。学術的な書籍でも、コンテンツについて正面から論じたものは少ない。その理由は、個々の「作品」に還元するのでも、映画やテレビ、アニメ、ゲーム、SNSなどの「メディア」形式から分析するのでもなく、あくまでコンテンツ=「内容・中身」を中心において論じなければならないからだ。こうした困難のなかで本書は、あえてメディア・コンテンツ論に挑戦している。

まず、本書の評価されるべき特徴は、多角的なコンテンツ論を試みた入門書であることだ。これまでメディア研究では、優れた教科書・手引書が数多く出版されてきた。しかし、コンテンツ論に特化したものに関しては、マーケティング的・産業論的関心が中心を占める書籍が多かった。それに対して本書は、理論的・実務的な視点をともに備えている点で優れている。

次に、評者が最も惹かれたのは、分析事例のセレクトである。多くの研究書で要請される学問的重要性に加え、入門書では読者の関心を引くトピックをいかに選ぶかが大事になってくる。本書での研究事例は、『ターザン』誌(第五章)、ゾンビ(第六章)、「魔法少女」アニメ(第七章)、スーパー戦隊(第十一章)、コスプレ(第十三章)などである。例えば、評者の勤務先での卒論テーマには、本書で取り上げられているコンテンツに関わるものが多く見られる。こうした分析対象は、大学生はもちろん、コンテンツに対して知的関心のある広い読者層が興味をもつ事象であるように思われる。

最後に、評者が物足りなく感じた点は、中核である「コンテンツ」概念に関わる理論的検討の不足である。例えば、第九章では、コンテンツ(内実)を分析するためには、フォルム(形式)の解明こそが不可欠だと主張されているが、ここでのフォルムは同じく形式に注目する「メディア」概念とどのような関係にあるのだろうか。もちろん、第一章ではフィスクのメディア・テクスト論、第五章ではマクウェールによるメディア研究の整理が検討されているように、著者(章)によっては既存のメディア理論との接続が行われている。しかし全体としては、既存の有名なメディア理論・文化理論の参照が少ないように思われる。たしかに、教科書・入門書の性質が強い本書では読みやすさを重視したのかもしれない。しかし、やはり学説や理論は、本書の分析結果をより広い社会的・文化的脈絡に位置づけるために不可欠だと思われる。

以上で、メディア研究の流れから評価できる点、評者にとって魅力的だった点と批判点を述べてきたが、本書は、現代文化のアクチュアルな領域のひとつであるコンテンツを学術的に捉えようとする挑戦として価値があり、今後も参照される基本書と言えるだろう。
この記事の中でご紹介した本
シリーズ・メディアの未来8 メディア・コンテンツ論/ナカニシヤ出版
シリーズ・メディアの未来8 メディア・コンテンツ論
著 者:岡本 健
出版社:ナカニシヤ出版
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