核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実 書評|木村 朗(創元社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. 科学・技術
  5. 原子力
  6. 核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実の書評
読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年8月1日 / 新聞掲載日:2016年5月13日(第3139号)

核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実 書評
原爆投下の「なぜ」に新たなアプローチを

核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実
著 者:木村 朗、高橋 博子
出版社:創元社
このエントリーをはてなブックマークに追加
「戦後史の謎を解く鍵は『核』にある」

そう着眼した二人の著者が、原爆製造計画から始まった核の歴史をひもとくことで、日米両政府により巧妙に隠蔽された幾多の問題の解明に取り組んだのが本書である。具体的には「結果的に多くの人命を救ったという原爆神話とは何か?」「放射能汚染はどのように過少評価されたのか」「日本は国際原子力ムラには逆らえないのか」など、広島、長崎の原爆投下、そして福島第一原発事故を経験した日本社会の抱える多様で複雑な問題が、Q&Aの形で学生や一般の読者にもわかりやすく解説されている。なかでも評者が注目したのは、原爆投下の「なぜ」という疑問に対して、新たなアプローチを試みた点である。

なぜ原爆は投下されたのか。その理由をめぐっては、西嶋有厚著『原爆はなぜ投下されたか』や荒井信一著『原爆投下への道』、アメリカではガー・アルペロビッツ著『原爆投下決断の内幕』をはじめ、古典と呼ぶべき名著がすでに多く存在している。それでもなお、「なぜ」という疑問は消えない。それは原爆を製造したマンハッタン計画が、計画を主導した政治家や科学者ら主要人物の思惑を超えてパンドラの箱を開けることとなり、人類にはかりしれない災厄をもたらしたからだろう。

本書は、核開発の歴史だけでなく、当時の社会を多面的に分析することで、核兵器を生み出した時代の本質をとらえようとする。
例えば原爆投下の前史として、日本軍も中国に対する無差別爆撃で大量殺戮を行った事実を踏まえながら、「原爆投下はあくまで無差別爆撃の延長線上にある」と強調する。原爆を開発した側の視点、原爆を投下された側の視点だけでなく、人類史という観点から「核」をキーワードに戦後史を解明しようとしているのである。

そのもくろみの成果として、終戦工作をめぐる日本側の思惑も複雑に絡まった末の原爆投下であったことが、実証的に論じられる。著者の木村氏は「原爆投下はある種の日米合作であった」という結論を導いている。それはいまの日米関係にもつながる問題提起である。

鹿児島大学で平和学を専攻する木村氏は、那覇市にある琉球・沖縄センターの特別研究員として沖縄からの情報発信にも努めている。差別される市民の側に立つという姿勢は、本書でも一貫している。

もう一人の著者である高橋氏はアメリカの公文書を丹念にひもとくことで、日米両政府による原爆被害調査の欺瞞性を指摘する。その延長線上にある福島原発事故の被害者対策についても、問題点を白日の下にさらす。高橋氏は「一人の歴史家として、歴史的事実によってウソを暴くことが、国際原子力ムラに立ち向かう第一歩だ」と、本文を結んでいる。こうしたまっとうな発言をする高橋氏は、講師として勤務していた広島市立大学平和研究所を去年九月に雇い止めされた。これ以上、ウソを暴かれたくないという権力側の意思表示であろう。私たちは、こんなことがまかり通る時代と社会に生きているのである。
この記事の中でご紹介した本
核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実/創元社
核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実
著 者:木村 朗、高橋 博子
出版社:創元社
以下のオンライン書店でご購入できます
「核の戦後史 Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
中村 尚樹 氏の関連記事
木村 朗 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
科学・技術 > 原子力関連記事
原子力の関連記事をもっと見る >