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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年7月31日 / 新聞掲載日:2018年7月27日(第3249号)

連 載 演出と自発性 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く66

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撮影中カメラのファインダーをのぞくドゥーシェ(中央白いシャツ)
JD 
 『ピクニック』に登場する窓は、当然のように、映画史における最も美しい画面です。パスティスを飲もうとする男たちがいて、その背景には閉じられた窓がある。外の風景を見るために窓を開けると、そこには別の世界が広がります。ブランコを楽しむ女性がおり、その周りにも喜びが広がります。そこから映画全体へと快楽が広がっていきます。
HK 
 ルノワールは何度も、ピクニックのような窓を自身の映画の中で再利用していますよね。
JD 
 もちろんです。
HK 
 例えば、『ランジュの犯罪』にも全くもって同じ窓が出てきます。こちらは、アパートの一階の部屋の窓を遮るようにして備え付けられていた広告を、家主の反対を押し切り、その部屋の住人のために、撤去するシーンです。陰鬱な部屋の窓が開かれることによって、お祭りのような雰囲気が生まれます。
JD 
 いずれにせよ、ルノワールの全ての映画には窓が出てきます。窓が画面の一部に出てくれれば、その窓は開かれます。
HK 
 全ての作品においてですか。確かに、『大いなる幻影』にも重要な窓がありました。『ジャン・ルノワールの小劇場』や『恋多き女』の窓も覚えています。
JD 
 すべての映画に出てきます
HK 
 『フレンチカンカン』にも出てきますか。
JD 
 『フレンチカンカン』には、出てきません。なぜなら、すでに窓の直接的な利用は問題となっていないからです。『フレンチカンカン』においては、シーン(=舞台、光景)が窓の代わりとなります。つまり、別の世界へと開かれる窓のような場が問題となります。でも、結局のところ、『フレンチカンカン』にも窓は登場します 見直してください。
HK 
 僕が『ランジュ氏の犯罪』を気に入っている理由の一つは、カメラの動きです。
JD 
 当然、見事なカメラの動きがいたる所で見られます。自殺をするためにアパートの外へと出るランジュ氏を追うカメラの動きのように、記憶に残る動きがたくさんあります。
HK 
 結局のところ、ルノワールの映画にはそれほど多くのカメラの動きはなかったのではないでしょうか。カメラが動くときには、いつも最上の画面があります。『フレンチカンカン』において、カンカンを踊るダンサーたちの股の下を抜けるカメラや、『草の上の昼食』などが思い出されます。
JD 
 ルノワールのカメラにとって最も重要なのは、パノラマのようであるということです。カメラが自らの外の世界へと向かっていきます。その点に注意して見てください。
HK 
 おそらくトリュフォーも、ルノワールに関して似たようなことを言いたかったのではないでしょうか。カメラと自発性という点についてです。
JD 
 おそらく、その通りでしょう。しかし、トリュフォーの映画を考えると、カメラの動きは非常に意識的に見えます。一方で、ルノワールのカメラの動きとは、見えないものです。確かに、カメラの動きを感じることはできます。しかし、あたかもそこに動きがあるということを感じさせないようにして動きます。
HK 
 ルノワールは、ドゥーシェさんによると生の喜びを感じさせる映画作家です。その点において、ルビッチについても少し話を加えましょう。僕の好きな作品に『天国は待ってくれる』があります。天国の門の前で、自分の人生の節目となる記念日を想起する男の話です。マイケル・パウエルや他の人も似たような作品を残しているので、その時代における一つのジャンルでした。それでも、ルビッチの映画が印象深いのは、死が全く出てこない点です。
JD 
 ルビッチは、死を見せることができないからです。彼は、いつも必ず生きた人間の姿を見せます。
HK 
 その生きることを見せることができるというのは、とてつもないことだと思います。『天国は待ってくれる』の主題は死です。しかし、その肝心の死を見せることはありません。祖父が画面に出てこなくなり、妻も印象的なダンスの後に出てこなくなる。彼らが死んだことはわかります。それでも、物語自体は淡々とハッピーエンドへと向かっていきます。
JD 
 それは、ルビッチの映画が、人生は常に続いていく、という考えに基づいて作られているからです。ルビッチに対するこのような見方は、非常に哲学的です。<次号につづく>
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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