ヒトごろし 書評|京極 夏彦(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2018年7月28日 / 新聞掲載日:2018年7月27日(第3249号)

京極 夏彦著『ヒトごろし』 
神戸松蔭女子学院大学 細谷 綾香

ヒトごろし
著 者:京極 夏彦
出版社:新潮社
このエントリーをはてなブックマークに追加
ヒトごろし(京極 夏彦)新潮社
ヒトごろし
京極 夏彦
新潮社
  • オンライン書店で買う
『ヒトごろし』。大きく書かれた書籍のタイトルに目を奪われて手に取った。想像以上に分厚い。一体どうやってハードカバー製本で1000ページを超える土方歳三の物語を書くことができたのだろうかとますます惹かれた。

著者の京極夏彦氏は、小説家であり、妖怪研究家でもあり、デザインや装丁を手掛けるアートディレクター(AD)でもありと、幅広く活躍されている。

著者の作品には、『百鬼夜行シリーズ』、『巷説百物語シリーズ』などシリーズものが多い。また、発表されたすべての作品は、登場人物、出来事など、それぞれ関連づけられた共通の世界観を持っている。『ヒトごろし』は、2015年に発売された『ヒトでなし 金剛界の章』に登場する人物が関連づけられている。

著者の他の作品と違う点は、実在した人物を主人公にして書かれているところだ。この作品以外は、全て架空の人物が登場する。だが、『ヒトごろし』は、「新選組」という歴史上の人物を登場させている。しかもその主人公、土方歳三は、健全な性格ではない。人が持っている最低限の感情さえも欠如していて、刀を使って人を綺麗に殺したがる凶悪な人物。今まで読んだことのないような新選組・土方歳三のキャラクター性である。

しかし土方は、彼自身の快楽ゆえに無差別に刀を振り回す極悪人ではない。彼の考え方は理にかなっていて、心のない人物に近くはあるが、頭の切れる人物として新選組・鬼の副長を務め、彼自身や新選組が今どう動くべきかを的確に考えて行動している。

土方歳三が作品で唯一人の凶悪な人物として書かれていないのも特徴的である。土方以外に凶悪な人物は三人登場する。しかしその三人にもそれぞれ特徴が割り振られていて、土方とはどこかが違う。土方と誰かという一対一や、土方と複数人のように、土方とこの三人を比較して読むとより一層物語を楽しめる。もちろん、近藤勇のような、土方と同じ武家出身ではない人物と比較しても楽しめるだろう。

私はこの作品で初めて歴史小説を読んだ。歴史小説と聞くと、堅苦しい書き方で過去の歴史であったことが淡々と書かれているものだと思い込んでいたので、著者の作品を読んで違うのだと実感した。確かに、過去の歴史を題材として書かれているが、著者独自の世界観を持って書かれているため、オリジナリティを深く感じられて、とてつもなく長い物語であったが、最後まで魅了され続けて読了することができた。

新選組・土方歳三がヒトごろしという物語。彼はなぜ人を殺したい欲望を持っていながら新選組の副長として務めを果たしてきたのか。この凶悪な人物の末路はどういったものになるのか。最後まで読み進めていかなければ、彼の生涯は分からない。
この記事の中でご紹介した本
ヒトごろし/新潮社
ヒトごろし
著 者:京極 夏彦
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
京極 夏彦 氏の関連記事
【書評キャンパス】大学生がススメる本のその他の記事
【書評キャンパス】大学生がススメる本をもっと見る >
文学 > 日本文学 > 歴史・時代関連記事
歴史・時代の関連記事をもっと見る >