妊娠カレンダー 書評|小川 洋子(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2018年7月31日

妊娠って何なんだろう? 生命の不思議が一番詰まっているものだ
第104回芥川賞 小川洋子著「妊娠カレンダー」(1990年)

妊娠カレンダー
著 者:小川 洋子
出版社:文藝春秋
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妊娠カレンダー(小川 洋子)文藝春秋
妊娠カレンダー
小川 洋子
文藝春秋
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 今回は、第104回芥川賞を受賞した小川洋子さんの「妊娠カレンダー」(初出『文藝界』1990年9月号)。前回は、夫婦がテーマの「異類婚姻譚」を選んだが、今回は妊娠がテーマだ。

一緒に暮らす姉が、妊娠をした。二週目、三週目……と妊娠が進むにつれてつわりが悪化し、何も食べられなくなったと思ったら、暴飲暴食をする姉。妹は妊娠によって変わってしまった姉をむしばむおなかの中の赤ちゃんを気味悪く思い、染色体を壊すと聞いたアメリカ産のグレープフルーツのジャムを姉に毎日食べさせるようになる。作品名通り、妊娠の様子を日記形式で綴ってある。

小川洋子さんの物語は、少し怖い。最近、図書室で文庫版の「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んだ。お化けとか、悪魔とかの怖さではなく、人間の心理的なところを毒々しい世界観で描きゾクッとさせる。この話も、刃物などの凶器ではなく、あのどろっと甘いジャムで染色体を壊そうとする。ぐつぐつとジャムを作っている姿を想像するだけで怖い。

姉の妊娠によって妹はジャムを作るようになってしまったのだが、考えてみると、妊娠って不思議だ。私が母のおなかの中で成長していってへその緒でつながっている状態で成長して生まれてくる。約十カ月って結構長い。母が持っていた私のへその緒を見ると、「こんなものだけで胎児の私は成長できたのか?」と驚いた。その紐だけで私は受精卵から人間の形に成長する。しかも、生まれてくるまでにつわりをはじめ、たくさんの苦労がある。母に、妊娠中のことを聞いてみると、つわりで外に出られなかったことや、栄養指導を何度も受けたことを聞いた。お産も人生で一番痛いと聞く。赤ちゃんはすごくかわいいけれど、そんなつらい思いをしてまで赤ちゃんを産もうとするなんて、まだ私には理解できない。男の人に生まれたほうが得だとさえ思っている。でも、生まれる前からお母さんに大切に育てられてきたと思うと、やっぱりお母さんってすごい。

結局、妊娠って何なんだろう? 生命の不思議が一番詰まっているものだと私は思う。妊娠している側は生まれてくる自分の赤ちゃんに期待を膨らませているが、つらく大変なことも多い。周りの人達も妊娠に振り回される。決して、良いものではないように感じる。でも、赤ちゃんが生まれてくると、みんなが「おめでとう!」と祝う。『妊娠カレンダー』では、生まれた後の赤ちゃんは描かれていないので、グレープフルーツのジャムだけで本当に染色体が壊れたのかどうかはわからないが、姉は元気な赤ちゃんを産んでいるのではないか。きっと、妹は赤ちゃんが生まれてくることが待ち遠しかったと思う。自分の姪っ子ができるのだから嬉しいはずだ。

妊娠した本人も、その周りの人物も、妊娠という出来事によって気持ちに変化が現れてきてしまう。どんな気持ちになるのかは、実際にそばで感じてみないとわからないのだが、結婚よりも先のことで、想像することすらまだまだ難しいが、身近な人が妊娠したり、自分が妊娠することになったら……、その時の気持ちを日記にしようと思う。面白そうだ。


【おまけ】
「作品の中ではグレープフルーツのジャムでしたが、私は、プラムのジャムを作ってみました。美味しく出来て良かったです。」
この記事の中でご紹介した本
妊娠カレンダー/文藝春秋
妊娠カレンダー
著 者:小川 洋子
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「妊娠カレンダー」出版社のホームページはこちら
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