連 載 地中海とヌーヴェルヴァーグ ジャン・ドゥーシェ氏に聞く67|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年8月7日 / 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)

連 載 地中海とヌーヴェルヴァーグ ジャン・ドゥーシェ氏に聞く67

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ドゥーシェ(右端とひとりおいて)ベルナール・エイゼンシッツ
HK 
 以前から、ヌーヴェルヴァーグの作家たちと地中海の関係について気になっています。例えば、ゴダールは長編を撮り始めた頃から、今日に至るまで何度か地中海を映画の重要な要素としています。トリュフォーも、多くの作品を地中海の方で撮影しています。シャブロルも、パリよりも南仏が舞台となることが多かった印象があります。他にも、ジャック・ロジェやジャン=ダニエル・ポレのような作家たちもいます。そのような理解を踏まえた上で、ヌーヴェルヴァーグの時代における地中海とは何だったのでしょうか。
JD 
 地中海については、ルノワールの『素晴らしき放浪者』を踏まえれば、よりよく理解できるはずです。映画の最後は、コート・ダジュールへと向かって行く浮浪者たちのショットで締めくくられます。別の言い方をするのならば、地中海とは30年代40年代を通じて、お金持ちのための場所でした。地中海に行くためには、お金持ちである必要がありました。そのために、多くの人が地中海を夢見ていました。海は青く、温暖であるといったイメージがつきまとっています。パリでの日常とは異なる、一種の幻想であり続けていました。それがコート・ダジュールのアイデンティティでもありました。
HK 
 夢が表象されているということですか。30年代には、運よく宝くじに当たったパリジャンが、南仏へと旅行をする作品が数多くありました。わかりやすい例では、ヨーエ・マイの『パリ―地中海』は、最終的にコートダジュールに住む王族と結婚をするお伽話のようになっていました。
JD 
 当然そのようにして、幻想と南仏のイメージが結びついていました。地中海は長年に渡りお金と結びつく夢想の対象でした。本当に金持ちでなければ南仏に行けませんでした。しかし、50年代の初頭から、地中海のそのような幻想が終わりを迎え、誰もがコート・ダジュールを訪れることができると考えるようになりました。そして、それ以前の地中海の持つイメージが失われていったのです。
HK 
 地中海といえば、ジャック・ドゥミの『天使の入江』も思い出されます。
JD 
 ヌーヴェルヴァーグの作家たちは皆、地中海で映画を撮っています。それぞれが、地中海の持っていた幻想を撮影しています。ロメールも、地中海を最初期に撮影しています。
HK 
 どの作品ですか。
JD 
 最初の作品です。
HK 
 『獅子座』ですか。これはパリを舞台にした作品ではなかったですか。
JD 
 『獅子座』ではなく、『コレクションする女』です。私が言いたかったのは、「六つの教訓話」の最初の作品です。最初の二つは短編として制作されたので、最初に撮られた長編は『コレクションする女』です。『コレクションする女』は、この一連のシリーズの実は四話目なのですが、最初に実現された長編作品です。そして、地中海を舞台とした作品です。
HK 
 どうしてロメールは、そのような複雑な順番で作品を作ったのですか。
JD 
 ロメールは、50年代の終わり頃からすでに6本の作品のアイデアを持っていました。しかし、最初の二本は短編で撮る必要がありました。そして、四話目も三本目の作品として制作して、その後三話目である『モードの夜』を四本目として撮りました。そして、5本目6本目は順番通りに、制作することができました。
HK 
 それは、経済的な理由によるものですか。
JD 
 『コレクションする女』の撮影を始めた頃のロメールは、十分な制作資金を持っていませんでした。それが理由で、『モードの夜』ではなく、より制作資金が安く済む『コレクションする女』を、長編として撮影することにしたのです。三人の俳優をサン=トロペに連れて行き、一月の間のヴァカンスの風景を撮影するだけです。それほど多くの制作資金が必要な作品ではありません。
HK 
 ロメールは、いつも経済的な問題を抱えていたのではないですか。『カイエ』の編集長だった頃から、いろいろな問題に巻き込まれていた印象があります。
JD 
 ロメールは、いつも経済的な問題を抱えていました。それでも、最終的にはものすごいお金持ちになっていました。フランスで最もお金を持っていた演出家の一人でした。
HK 
 それは知りませんでした。彼の映画はスピルバーグのように、ドル箱映画ではないので(笑)。

〈次号につづく〉
(聞き手・写真=久保宏樹)
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