キッチン風見鶏 / 森沢 明夫(角川春樹事務所)読後に未来がキラキラする  美味しくて優しいファンタジー|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年8月4日 / 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)

読後に未来がキラキラする 
美味しくて優しいファンタジー

キッチン風見鶏
著 者:森沢 明夫
出版社:角川春樹事務所
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久しぶりにファンタジー要素の入った小説を書きました。以前は、縄文時代と現代の二つのラブストーリーが不思議なリンクを展開していく「ライアの祈り」でしたが、今回は、幽霊が見えてしまうという特殊能力を備えたウェイター・坂田翔平が主人公です。

この翔平が勤めている小さなレストランのオーナー兼シェフ・鳥居絵里にも特技があります。「プロファイリング」をすることで、お客さんの心身の状況を正確に把握し、その人にピタリと合った最高の料理を作れるのです。

翔平と絵里。ちょっと変わったこのコンビが、海を見下ろす丘の上のレストラン「キッチン風見鶏」を回していきます。

小説を書くとき、ぼくはキャラクター作りに心を砕きます。見た目や性格を丁寧に作り込むのはもちろんのこと、それぞれに何らかの効果的な「特徴」を持たせているのです。とりわけ、サブキャラたちに「特徴」を持たせることで物語を生き生きとさせることにはこだわっています。しかも、なるべく彼らには長所と短所の両方を持たせます。なぜなら人間は「長所で尊敬され、短所で愛される」からです。

さらに今回は、伏線を張り巡らせることにも心血を注ぎました。その数の多さはもちろん、物語の深層へ読者を引きずり込むようなマニアックな伏線もいくつか用意しています。つまり、初読で気づいて回収できる「初心者向け」の伏線から、百回読んでも気づかないであろう「超・上級者向け」の伏線まで、びっしりと散りばめたのです。

読者は、隠された伏線に気づけば気づくほど、物語がミルフィーユのような重層構造になっていることを知り、どんどんこの不思議な世界にハマっていくはずです。

もしも、あなたが「マニアックな読者」であるならば、宝探しをするつもりになって、ぼくが、深く、深く、物語の低層にこっそり隠した小さな伏線を掘り当てて、思いがけない「気づき」にハッとしながら読んでみると面白いかも知れません。もちろん、伏線などまったく気にせず、サラっと読んでもらっても構いません。それでも充分におもしろい「人情もの」に仕上げたつもりですので。

物語に込めたテーマも、多岐に渡ります。

なにしろ、愛すべきキャラクターたちは、「死」を身近に感じることで「生」のきらめきに気づき、努力の末の「失敗」を味わうことで、一皮向けて強くもなります。そして、「人と違った個性」を持って生まれたがために、傷つけられ、生きにくさを味わったことで、本当に大切な人を見つけることに成功するのです。ちょっと胸がキュンとするような「ラブ・ストーリー」としての側面も、キャラクターたちの人生を彩っています。

どうか、この本を読む前より、読んだ後の方が、あなたの未来がキラキラしていますように。そう祈りながら書き上げました。

美味しくて優しい物語を召し上がれ。(もりさわ・あきお=作家)(三六八頁・六八〇円・角川春樹事務所)
この記事の中でご紹介した本
キッチン風見鶏/角川春樹事務所
キッチン風見鶏
著 者:森沢 明夫
出版社:角川春樹事務所
以下のオンライン書店でご購入できます
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