おれは一万石 一揆の声 / 千野 隆司(双葉社)「崖っぷち大名」が藩政改革に挑む!  一万石の小藩で生きると決めた主人公たちの奮闘|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年8月4日 / 新聞掲載日:2018年8月3日(第3250号)

「崖っぷち大名」が藩政改革に挑む! 
一万石の小藩で生きると決めた主人公たちの奮闘

おれは一万石 一揆の声
著 者:千野 隆司
出版社:双葉社
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大名といっても、百万石の前田家から一万石の小大名まで、さまざまあります。何か不始末をしでかして、禄高が一俵でも減れば、一万石の大名は旗本に格下げになります。文政十三年(一八三〇)に一万石きっかりだった大名家は、四十四家ありました。

下総高岡藩井上家は、その中の一つです。

尾張徳川家の血を引く主人公正紀は、美濃今尾藩三万石竹腰家の次男として生まれました。竹腰家は尾張藩の付家老を務める家柄でもあります。その気になればもっとご大身の御家に婿入りできたはずですが、井上家に婿入りしました。

小大名家ならば、藩政に精いっぱい腕を振るえると考えたからです。しかし現実は予想もつかなかったくらい、厳しいものでした。ときは天明六年(一七八六)で、有名な天明の飢饉の折です。

高岡藩の領地は、利根川べりにあります。増水し今にも決壊しそうな堤の普請が、二千本の杭を調達できずに、指を銜えて見ていなければならない状態でした。

正紀は杭を得るところから始めて、命懸けで堤普請を行い、高岡藩の田圃を守ります。

井上家には、京という気の強い上から目線でしかものを言わない姫がいました。これが、正紀の正室となりました。偉そうな口ぶりに腹が立ちます。

しかし京は、生意気な正室ではありましたが、愚かではありませんでした。財政逼迫の窮地にある高岡藩の事情を理解して、心血を注ぐ正紀の姿に、心を許していきます。政略結婚同然で夫婦になった二人は、徐徐に心を通わせていきます。

天明期の財政破綻寸前の小大名家では、年貢米だけを頼りに、藩政を動かすことはできません。そこで正紀は考えました。利根川べりの高岡という土地を何かで活かせないかと。

江戸時代、利根川は物資の輸送の大動脈でした。高岡河岸を、物資輸送の中継拠点にすることで、運上金や冥加金を得られるのではないか。雇用を増やせるのではないかと考えた正紀は、西国からの下り物である塩や淡口醤油を輸送する手立てを考えます。

この小説は、一万石の小藩で生きると決めた主人公が、妻の京や、家老佐名木ら家臣と力を合わせて、奮闘してゆく物語です。

京との夫婦仲も、波瀾万丈です。一目惚れではない二人は、心のすれ違いを乗り越えて、夫婦の絆を結んでいきます。

高岡藩に訪れる危機を、どう乗り越えて行くのか。若い夫婦は、それにどうかかわってゆくのか。ページを捲りながら、応援していただければと思います。

八月刊の最新刊では、高岡藩を一揆が襲います。時は天明の大飢饉の真っただ中です。

高岡藩を襲う未曾有の危機に、正紀と京は、立ち向かっていきます。(ちの・たかし=作家)(二八八頁・六三〇円・双葉社)
この記事の中でご紹介した本
おれは一万石 一揆の声/双葉社
おれは一万石 一揆の声
著 者:千野 隆司
出版社:双葉社
以下のオンライン書店でご購入できます
「おれは一万石 一揆の声」出版社のホームページはこちら
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